(※写真はイメージです/PIXTA)
崩れた人生設計
高橋さんは次第に出社前に動悸を覚えるようになりました。休日も会社のことが頭から離れません。
「俺は何のために35年間働いてきたんだ」
役職定年から半年後。高橋さんは車を手放しました。毎月3万円近かった維持費を削るためです。生命保険も見直し、夫婦の外食はほぼなくなりました。それでも赤字は埋まりません。
長男には「大学院への進学は奨学金を考えてくれ」と伝えました。
「急に言われても困るよ」
電話口の息子の声は冷たく聞こえましたが、高橋さんは責めることができませんでした。息子から見れば、父親はずっと高収入の会社員だったからです。
家庭では節約を求められ、会社では存在感を失う。居場所を失う感覚だけが積み重なっていきました。
「年齢の問題だから仕方ないと言われます。でも、仕方ないの一言で人生設計は終わりません」
「定年はまだ先です。でも、自分の会社人生は55歳で終わった気がしています」
内閣府『令和8年版 高齢社会白書』によると、男性の非正規雇用率は55〜59歳の10.5%から、65〜69歳では64.9%へと急増します。役職定年による収入減は、後に続く「非正規化という崖」の入り口に過ぎません。さらに、60歳以上の「自己啓発(学び直し)」実施率は20.6%まで低下しており、スキルのアップデートをせずに再雇用へ突入する人が大半です。50代を「人生後半戦の助走期間」と捉え、社外でも通用するスキルを見極めて自律的なキャリア形成を始めることこそが、役職定年後のカギになりそうです。