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55歳で突きつけられた「年収半減」の現実
都内中堅メーカーでマーケティング部門の課長を務め、60歳の定年直前まで年収880万円を得ていた佐藤和男さん(60歳・仮名)。都内の分譲マンションで、妻(58歳)と2人暮らし。住宅ローン残高は400万円、毎月の返済額は9万円。毎月の生活費は約35万円を要しており、一見すると恵まれた現役生活を送っているように見えました。
しかし、55歳を迎えた際、社内の役職定年制度によって課長職を解かれ、年収は650万円へと3割減。さらに、再雇用制度の賃金テーブルや先に定年を迎えた先輩社員の実態から、60歳定年後の年収は350万円程度まで落ち込むことが判明しました。55歳での役職定年と60歳での再雇用という「二段階の大幅減給」に対し、佐藤さんは恐怖を感じたといいます。
「55歳で役職を外れ、給与が減ったこともショックでした。その上、60歳で再雇用になれば年収350万円になり、かつての部下から顎で使われると知ったとき、頭の上がらなくなった先輩たちの顔が浮かびました。『この歳まで会社に貢献してきたのに、最後は半分以下の給料でヘコヘコ頭を下げて生きるのか』と思うと、定年後も会社に残ることに疑問を感じるようになったんです」
厚生労働省『令和7年 高年齢者雇用状況等報告』によると、定年を60歳とする企業は62.2%にのぼり、65歳までの雇用確保措置として「継続雇用制度の導入」を行う企業が65.1%と主流です。
一方、定年後の厳しい雇用実態は総務省『労働力調査(2025年平均)』にも表れており、65歳以上の役員を除く雇用者586万人のうち、非正規の職員・従業員が占める割合は76.1%(446万人)に達します。正規の職員・従業員は140万人(23.9%)にとどまります。このように、定年後は非正規の雇用形態へ移行するケースが圧倒的に多いため、現役時代に比べて賃金の大幅な低下を招きやすい構造となっています。
佐藤さんは、この「会社の都合に振り回されるセカンドキャリア」を拒否し、自力で収入を得る準備を始めることを決意。週末や平日の夜間を使い、社外で自分のスキルを活かす行動に打って出ました。本業で長年培ったWebサイトの改善提案や、中小企業向けマーケティング支援のノウハウを活用する狙いでした。まずはクラウドソーシングサイトに登録し、地元の個人飲食店や整体院へホームページ制作支援やSNS運用の助言を行う小さな案件から実績を積み上げていきました。
最初に手掛けた案件は近所の整体院の集客改善で、報酬はわずか2万円。それでも、会社の看板に頼らず自分の腕一本で稼ぎ出した対価は、毎月振り込まれる給料とは重みが異なっていたといいます。佐藤さんは本業に支障をきたさないよう、無駄な残業や付き合いの飲み会への参加を控えるようになりました。業務効率化によって捻出した時間を、丁寧な顧客フォローに充てたのです。
57歳になるころには、制作実績を見た口コミや紹介によって固定客がつき始め、副業収入は月5万円を維持できるようになっていました。顧客の売上増加に貢献することで単価も徐々に向上し、60歳の定年を迎える直前には、月15万円の安定した収入基盤が完成していました。