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高額所得者のタワマン生活と冷えた夫婦仲
都内のIT企業に勤める加藤拓也(46歳・仮名)。年収は1,200万円で、妻・美咲さん(44歳・仮名)も共働きで、年収600万円ほどを得ています。中学生の長男は、都内の有名進学校に通い、周囲からは順風満帆なエリート層と見られていました。
住まいは6年前に購入した都心の大型タワーマンションの高層階。購入価格は8,500万円。頭金はほぼ用意せず、諸費用を含めた約8,500万円全額を住宅ローンで組みました。
月々のローン返済額に管理費、修繕積立金、駐車場代を加えると、毎月の住居費は約28万円に達します。加えて、長男の私立中学の学費や塾代、夏期講習などの教育費もかさみました。夫婦ともに収入が高いことから、旅行や外食などにもそれほどお金を惜しまず使ってきたといいます。結果として、収入の割に手元に残るお金は多くなく、世帯の貯蓄額は400万円程度でした。
総務省『家計調査 貯蓄・負債編(2025年平均)』によると、加藤家のような年間収入1,500万円以上の勤労者世帯の平均貯蓄額は3,802万円に上り、手元の通貨性預貯金だけでも1,530万円を保有しています。また、住宅ローンを返済している勤労者世帯(平均世帯主年齢47.0歳)の全体平均を見ても、平均年間収入911万円に対し、貯蓄額は平均1,300万円となっています。
世帯年収約1,800万円、世帯主46歳の加藤家において、貯蓄が400万円しかないという状況は、高収入世帯の平均値と比べて低く、住宅ローンの負担や教育費などによる家計の逼迫ぶりを裏付けています。
家計の余裕のなさは、夫婦関係にも暗い影を落します。日々の会話は途絶え、教育方針や支出を巡る口論が絶えませんでした。ある夜の喧嘩はいつも以上に激しく、ついに離婚話へと発展します。
「もう、無理、顔も見たくない」
美咲さんの言葉に、拓也さんも売り言葉に買い言葉で応じます。
「俺も限界。別れよう」
離婚話を受けて、翌週、拓也さんは大手不動産仲介会社に査定と費用試算を依頼しました。住宅ローン残高は約7,600万円。8,000万円で売れればローンを完済し、手元に現金が残ると踏んでいました。
「正直、8,000万円では難しいです。現在、同じマンション内で他に5戸が売りに出されています。しかも、間取りが似ている競合の1戸が先日、7,700万円に値下げしました。買い手は必ず比較します。8,000万円だと、正直に申し上げて誰も見向きもしません」
不動産価格の高騰がニュースを賑わすなか、あわよくば購入価格よりも高い金額を期待していただけに、担当者の指摘にしばらく言葉を失ったといいます。
「うちは高層階ですよ」と反論しても、「都心のタワーマンションでも、規模の大きなところではそれほどプレミア感がないんですよ」と、担当者は首を振ります。
担当者は7,700万円で売却した場合の試算を提示しました。仲介手数料や登記費用などの売却経費に約250万円がかかるため、手元に入る金額は約7,450万円にとどまります。ローン残高7,600万円に対し、約150万円が不足する「オーバーローン」の状態になる計算です。