※写真はイメージです/PIXTA
ルール変更のウラ技…「比較対象を大企業に変える」
では、国はどのようにして、この大幅な給与引き上げを実現したのでしょうか。
国家公務員の給与は、労働基本権が制約されている代償として、人事院が社会一般の情勢に適応するように国会と内閣に勧告する仕組みになっています。いわゆる「民間準拠」の原則です。つまり、民間の給与水準に合わせて、公務員の給与水準も決まるということです。
ここで人事院は、ある「ルールの見直し」を行いました。官民の給与を比較する際の、基準となる「対象企業」の規模を変えたのです。
従来、比較対象となる民間企業は「50人以上」の規模でした。これを、令和7年の勧告からは「100人以上」へと引き上げました。さらに驚くべきは、本府省で働くエリート職員(総合職など)の比較対象です。これまでは東京23区や本店にある「500人以上」の企業と比較していました。これを一気に「1,000人以上」の超大企業へと引き上げたのです。
白書では、この見直しの理由を「行政課題の複雑化・多様化や今日の厳しい人材獲得競争を踏まえ、公務の職務・職責を重視したものとするため」と説明しています。人材獲得において、霞が関が競合しているのは日本を代表するような大企業である。だから、給与の比較対象もそれに合わせるべきだ、という論理です。
比較する相手が「中堅・大企業」から「超大企業」へとシフトすれば、当然、基準となる民間給与の水準も上がります。この比較方法の見直しが、今回の「初任給30万円超え」や大幅な給与アップの強力な後押しとなったことは間違いありません。
この給与引き上げの波は、初任給だけにとどまりません。人事院の調査と新たな比較方法に基づいたところ、国家公務員の月例給は民間に比べて平均1万5,014円(3.62%)下回っていることが判明しました。これを是正するため、月例給の引き上げはもちろんのこと、いわゆるボーナスにあたる「特別給(期末手当・勤勉手当)」も引き上げられました。支給月数を0.05月分引き上げ、年間の支給割合を4.65月分としたのです。
また、本府省で働く職員に対しては、業務の特殊性や困難性が高まっているとして「本府省業務調整手当」が増額されました。課長補佐級で10,000円、係長・係員級でも2,000円の手当額が引き上げられています。
もはや「公務員は責務のわりに薄給」というステレオタイプは通用しなくなってきています。国を挙げての「働き方改革」と「給与のアップデート」。人事院によるこれらの大胆な施策は、はたして若者たちの心を掴み、優秀な人材を再び霞が関へと引き戻す起爆剤となるのでしょうか。
既存のルールを変えてまで挑む、国の「本気の人材獲得戦略」。その効果が表れるのかどうか、今後の動向から目が離せません。