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月額25万円の老人ホームで起きた異変
都内に住むパート主婦の福田智子(52歳・仮名)さんは、一人暮らしをする81歳の母・高橋節子(81歳・仮名)さんの今後について頭を悩ませていました。元々節子さんは夫を亡くしたあと一人暮らしを続けていましたが、膝の痛みが悪化し自力での歩行が困難になったのです。
福田家の世帯年収は、智子さんのパート収入を合わせて800万円ほど。毎月11万円の住宅ローンを払い、残債は1,200万円残っています。自分たちの生活を守りながら母と同居して介護を行うことは、現実的に困難な状況でした。
厚生労働省『2025年 国民生活基礎調査』によると、同居の主な介護者の割合は46.1%で、そのうち「子」が18.2%、「子の配偶者」が4.2%を占めています。同居介護の負担は重く、介護時間が「ほとんど終日」に及ぶ主な介護者のうち、子が占める割合は28.9%に達しているのが現状です。
また、要介護者等が65歳以上の場合、同居の主な介護者も65歳以上である割合は61.9%に上り、老老介護の深刻化も指摘されています。仕事や家計を維持しながら家族が介護を担うことの物理的・精神的な厳しさは増しており、施設入居などを選択せざるを得ない世帯が多い現状を裏付けています。
一方で節子さんの公的年金は月額18万円、手取りで17万円ほどでした。1,500万円ほどの預貯金もあり、幾分、蓄えに余裕があります。そこで智子さんとともに施設探しをスタートさせました。最終的に選んだのは、智子さんの家からも行きやすく、手厚いケアを売り文句にしている介護付き有料老人ホームです。入居一時金は500万円、月額費用は25万円。ほか雑費も合わせると月28万円前後になり、毎月10万円強が不足する計算となります。
足りない分は貯蓄を取り崩して対応しますが、10〜15年ほどは心配ないと考えての決断でした。何よりも、「看護師24時間常駐」を謳う説明に、節子さんも智子さんも「これで安心」と胸をなでおろしていたといいます。
しかし、入居から半年が過ぎたころから現場の様子が一変します。ある夜、節子さんは強い尿意を感じてナースコールを押しました。しかし1時間以上誰も来ず、そのまま失禁してしまったのです。翌週末、面会に訪れた智子さんに対し、節子さんは震える声で訴えました。
「助けて、もう限界よ。毎晩ナースコールを押しても1時間以上放置されるの。高いお金を払っているのに、私、ここで殺されるんじゃないかしら」
厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」が示す通り、介護業界全体の6割以上が抱える人材不足の波は、月額35万円クラスの高級施設にも押し寄せていました。熟練スタッフの離職が相次ぎ、現場は経験の浅い派遣スタッフばかりへと変化。食事の配膳が1時間遅れ、週2回の入浴介助がスキップされる事態が日常化していったのです。
思わず智子さんは強い口調で言い返しました。
「お母さん、ここ月30万円近くも払ってるのよ? 我慢できないの?」
節子さんは顔を赤くし、感情を爆発させました。
「こんな惨めな思いをするためにここに入ったんじゃないわ!」