経済的自由を手に入れる手段として注目されるFIRE。しかし、会社を辞めた後の人生については十分に語られていません。資産形成という目標を達成したにもかかわらず、その後の生活に戸惑いを抱える人もいます。40代でFIREを実現した男性の事例から、経済的自由の先にある現実をみていきます。
「資産1.2億円でも、ちっとも幸せじゃない…」43歳でFIRE達成の男性。昼からNetflixをダラダラ観るだけの日々「このまま人生終わるのかな」 (※写真はイメージです/PIXTA)

資産1.2億円でも、思い描いた幸せはなかった

「資産1.2億円でも、ちっとも幸せじゃないんですよね」

 

田中健一さん(48歳・仮名)。現在の金融資産は約1億2000万円。43歳でFIREを達成し、会社員生活から引退しました。都心のマンション暮らし、生活費は配当収入や資産の運用益、月40万円ほどで賄っています。

 

経済的な不安はほとんどありません。それでも最近、ある考えが頭から離れないといいます。

 

「このまま人生終わるのかなと不安になります」

 

大学卒業後、大手IT企業へ入社した田中さんは、20年以上にわたり働き続けてきました。40代前半には管理職となり、年収は1200万円を超えていました。

 

一方で、会社に人生を縛られている感覚もありました。平日は朝から晩まで働き、休日も仕事の連絡が入るなか、「自由な時間が欲しい。会社に行かなくても生活できるだけの資産が欲しい」と考えるようになりました。こうして、FIREを目指すことになったのです。

 

元々学生時代から株式投資を行っていましたが、生活費を抑え、投資金額を増やしていきました。その結果、資産形成は順調に進みます。目標額を設定し、到達するたびに次の目標を定めました。3000万円。5000万円。8000万円。そして1億2000万円――43歳で退職届を提出した日、自分は人生の勝者になったような気がしたといいます。

 

退職直後の生活は理想そのものでした。平日の昼間に映画館へ行く。空いている時間に買い物をする。好きな時期に旅行へ出かける。目覚まし時計も必要ありません。

 

「最初の数カ月は本当に楽しかったですね」

 

満員電車に乗る必要もありません。上司から電話がかかってくることもありません。長年求めていた自由がそこにありました。