(※写真はイメージです/PIXTA)
母が漏らした本音
その夜、健一さんは久しぶりに母と長く話しました。そこで初めて知ったことがあります。和子さんは以前から漠然とした不安を抱えていました。
自宅の維持管理。
将来の介護。
物価上昇。
病気への備え。
年金14万円に対し、毎月の生活費は約12万円。決して余裕があるわけではありません。それでも築43年の家だけは守らなければならない――そんな思いがあったのです。
「お父さんが残してくれた家だから」
和子さんはそう話しました。だからこそ、「家が危険だ」と言われた瞬間、冷静な判断ができなくなったのでしょう。
数日後、健一さんは消費生活センターへ相談しました。契約日や書類を確認した結果、まだ対応できる可能性があることが分かりました。しかし問題はそれだけではありませんでした。仮に契約を取り消せても、母が再び同じような勧誘を受ける可能性は残ります。一人暮らしである限り、狙われるリスクは消えません。
和子さんがぽつりと漏らしました。
「私、そんなに騙されやすく見える?」
騙されやすかったわけではありません。老いたからでもありません。ただ、「家を守りたい」という気持ちを利用されたのです。親が元気に暮らしていると思っていても、実のところはわからないもの。気づかないうちに、知らないうちに、被害にあっていることも珍しくないのです。
健一さんは今でも実家へ電話をかけるたび、最初にこう尋ねるそうです。
「最近、知らない人が来てないよね?」