高齢者を狙った住宅リフォームのトラブルが後を絶ちません。少子高齢化が進み、一人暮らしや高齢夫婦のみの世帯が増えるなか、不安を巧みにあおる業者による被害も深刻化しています。ある日、「家が潰れるかもしれないと言われた」と震える母から連絡を受けた長男。慌てて帰省した先で目にした一枚の契約書が、家族を思わぬ現実へと引きずり込んでいきます。
「今すぐ直さないと、家が潰れますよって…」震える78歳母からのSOS。慌てて帰省した長男が実家で目にした〈298万円の契約書〉と〈非情な現実〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

母が漏らした本音

その夜、健一さんは久しぶりに母と長く話しました。そこで初めて知ったことがあります。和子さんは以前から漠然とした不安を抱えていました。

 

自宅の維持管理。

将来の介護。

物価上昇。

病気への備え。

 

年金14万円に対し、毎月の生活費は約12万円。決して余裕があるわけではありません。それでも築43年の家だけは守らなければならない――そんな思いがあったのです。

 

「お父さんが残してくれた家だから」

 

和子さんはそう話しました。だからこそ、「家が危険だ」と言われた瞬間、冷静な判断ができなくなったのでしょう。

 

数日後、健一さんは消費生活センターへ相談しました。契約日や書類を確認した結果、まだ対応できる可能性があることが分かりました。しかし問題はそれだけではありませんでした。仮に契約を取り消せても、母が再び同じような勧誘を受ける可能性は残ります。一人暮らしである限り、狙われるリスクは消えません。

 

和子さんがぽつりと漏らしました。

 

「私、そんなに騙されやすく見える?」

 

騙されやすかったわけではありません。老いたからでもありません。ただ、「家を守りたい」という気持ちを利用されたのです。親が元気に暮らしていると思っていても、実のところはわからないもの。気づかないうちに、知らないうちに、被害にあっていることも珍しくないのです。

 

健一さんは今でも実家へ電話をかけるたび、最初にこう尋ねるそうです。

 

「最近、知らない人が来てないよね?」