なぜ古代コインには「自国買いマネー」が入りにくいのか?
コインが値上がりする要因について考えてみたいと思います。
ある国のコインが値上がりする要因はいくつかあるのですが、代表的なものは以下のとおりです。
1 コインを発行した国や地域の経済が急成長し、同時に富裕層が持つ資産が増えていること
2 その銘柄のデザイン(たとえば描かれた人物や生物)に人気があり、多くの収集家が欲しがること
3 残存数が少なく希少性が高いこと
4 歴史的にみて価値のあるコインであること
このうち古代コインにとって一番大切なのは1です。上述の1/3スターテルにも当てはまりますが、多くの古代コインは、たとえば現代のギリシャやトルコ、イタリアという国の概念は当てはまりません。
あえて言うなら「ギリシャ・ローマはじめ地中海地域で発行されたコイン」、あるいは「古代オリエントで発行されたコイン」というように、特定の国ではなく広い地域で発行されたコイン、言わば“領域コイン”と捉えるべきだと思います。
このように古代コインには、「コインを発行した国」「コインを発行した地域」という概念はないのです。たとえば、現代のトルコの人たちは古代リュディアに対して郷愁を抱くかもしれませんが、自国のコインという感覚は薄いのではないでしょうか。
同じことが古代ギリシャ・ローマにも当てはまります。たとえば、現代ギリシャ人は「ロードス島のテトラドラクマ(図表3)」に対して、「自国コイン」という意識はさほどないのではないでしょうか。
逆に言えば、古代コインはいずれも現代的な感覚での国境概念が乏しく、そのため自国コインを収集しようとするマネーが入りにくいのだと思います。
世界共通の文化遺産…古代コインが「値下がりしにくい」理由
さらに、古代コイン全般に、世界共通の文化遺産という見方もできるかもしれません。
簡単に言えば「中国人であろうが、ヨーロッパ人であろうが、日本人であろうが、多くの収集家が自らの起源を古代コインに見出すことができる」ということです。
私は、この普遍性の高さが古代コインの「ジワジワ値上がり感」に影響を与えるとともに、「値下がりしにくい安全な資産」の理由になっているとも思います。
もしこの考えが正しければ、古代コインはアンティーク・コインのなかでもかなり安全性の高い領域ということになるはずです。
田中 徹郎
株式会社銀座なみきFP事務所
代表/FP
