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リストラ宣告を受け入れ、手にした割増退職金2,300万円
「まさか自分が希望退職の対象になるなんて思いもしませんでした。上司から面談室に呼ばれたときは、本当に目の前が真っ暗になりました」
Sさん(61歳)は、当時の絶望感を振り返ります。新卒から長年勤めてきた大手企業で、事業再編に伴う希望退職者の募集が始まり、Sさんもその対象でした。当時は2人の子どもたちの学費がピークを迎える時期であり、辞めずに会社に残る道も必死に模索しました。
「妻に打ち明けたときは、お互いに無言になってしまいました。これからどうやって家族を養っていけばいいのか……」
しかし、社内での配置転換の厳しさや、今後の昇給が見込めない現実を突きつけられ、最終的には会社都合の退職を受け入れる決断を下します。
「割増退職金として約2,300万円が口座に振り込まれたときは、少しだけホッとしました。当面の生活費や学費の目途が立ったことで、ようやく前を向くことができたんです」
このまとまった退職金が精神的な支えとなったSさん。給与の高さよりも、自分のペースで無理なく働ける職場を探そうと決意しました。
年収300万円で再就職、取り戻した心身の平穏
ハローワークや転職サイトを活用した再就職活動を経て、Sさんが選んだのは年収300万円ほどの事務系の契約社員。以前の給与と比べれば半分以下に激減してしまいましたが、自身の適性に合った仕事を見つけたことで、心身の平穏を取り戻すことができました。
「年収は300万円台に下がりましたし、事務の仕事も決して楽なわけではありません。でも、胃に穴があきそうだった前職のプレッシャーに比べたら、コツコツと仕事を進められる今の職場のほうが、私の性格には合っていました」
収入が減った分は、割増退職金の一部を計画的に取り崩し、生活水準を極端に下げることなく乗り切りました。その後、子どもたちも無事に大学を卒業して社会人として自立し、Sさんの肩の荷はすっかり下りました。
「今では休日に夫婦で料理をしたり、庭で家庭菜園を楽しんだりしています。現役時代は仕事のことで頭がいっぱいで、こんな穏やかな時間が持てるなんて考えられませんでした」
精神的な余裕が生まれたことで、むしろ転職してからのほうが日々の幸福度は高いとSさんは語ります。
「世間一般では、中高年のリストラ=人生の終わりと捉えられがちです。でも私にとっては、心身の健康を取り戻せるターニングポイントでした。あのとき思い切って退職を受け入れて、正解だったと思っています」