我が子のひとり暮らしは成長の証。しかし、物価高が直撃する令和の学生生活は、親世代の常識が通用しない世界を生きているようです。ある親子のケースから、現代の大学生の家計の実情と、人知れず抱える孤独感についてみていきます。
年収850万円・46歳父、LINE既読がつかず不安。東京私大の長男をアポなし訪問も…ワンルームで見た「友人の正体」に凍り付く (※写真はイメージです/PIXTA)

データが示す「合理的で孤独な学生たち」

近年の学生生活実態調査からは、今の大学生が置かれている「昔とは異なる厳しい現実」が見えてきます。

 

読書費は月990円…「知の余白」を奪う物価高

大学生協連『第61回学生生活実態調査(2025年発表)』によると、下宿生の書籍費は990円と、ついに1,000円を割り込みました。背景にあるのは、深刻な物価高です。

 

下宿生の食費は2万9,853円と過去最高水準に達しており、仕送り額が過去10年で最高(平均7万4,652円)であっても、その増額分はすべて「食費」に消えています。海斗さんの「本を買うのはもったいない、AIに要約させる」という言葉は、単なる怠慢ではありません。「生活を維持するために、まず学習関連の出費を削るしかない」という、今の学生が直面している切実なやりくりを反映しています。

 

「タイパ」を追求せざるを得ない時間的貧困

佐藤さんは「12万円の仕送り」を十分だと考えていましたが、今の東京で「人並みの生活」を維持するコストは、かつての相場観を大きく超えています。

 

同調査では、学生の悩みの重心が「お金」そのものから、「時間が足りない」ことへと移っていることが示されました。アルバイト就労率は77.4%に達し、生活費を補填するために働くことが当たり前の風景になっています。

 

調査結果によれば、アルバイト時間が長い学生ほど「読書」や「予習・復習」の時間がゼロになる割合が高まる傾向がはっきりと出ています。限られた時間と予算のなかで、内部進学組との交流に伴う気疲れや出費を避け、短時間で知識を得られるAI要約や、気楽な「趣味・推し活」を選ぶ。それは今の学生にとって、自分の時間と心を守るための現実的な判断ともいえます。

 

否定されない居場所」としての生成AI

海斗さんがAIに「心の隙間」を埋めてもらっていたことも、今の大学生のトレンドと一致します。生成AIの利用経験は92.2%に急増し、その使い道はレポート作成だけでなく、「翻訳」や「相談相手」などの日常的なやり取りへと広がっています。

 

調査の自由記述欄には、「人間だと気を使うが、AIなら話しにくい話題も話せる」「人間と会話するより有意義なこともある」といった、孤独感の混じった本音が綴られています。

 

 

物価高で対人関係のコストを削り、AIに居場所を求める――。親世代が送った「仕送りの範囲で多少の無理や無駄ができた学生生活」は、今の東京にはもはや存在しないのかもしれません。