(※写真はイメージです/PIXTA)
東京の私大に通う19歳息子がワンルームで呟いた本音
メーカーで課長職の佐藤健一さん(46歳・仮名)。都内の有名私立大学に通う長男・海斗さん(19歳・仮名)は、地元を離れ、1人暮らしをしています。佐藤さんの年収は約850万円。物価高と学費が家計を圧迫していますが、「せめて生活費だけは」と、毎月12万円の仕送りを欠かさず続けてきました。
そんな佐藤さんは、海斗さんからの連絡が極端に減っていることに不安を募らせていました。以前であれば、LINEは即レスが基本でしたが、最近は「元気か?」「飯は食ってるか?」というメッセージに対し、返ってくるのは数日後のスタンプひとつ。心配のあまり、佐藤さんは週末、海斗さんが住む家賃6万8,000円のワンルームマンションを抜き打ちで訪ねました。
「えっ、お父さん。急にどうしたの」
ドアを開けた海斗さんは、どこか青白く、浮世離れした雰囲気をまとっていたといいます。部屋を見渡すと、佐藤さんは異様な光景に気づきました。本棚には教科書すらほとんどなく、かつて愛読していた新書の類も一冊もありません。代わりに、海斗さんはデスクの上でスマートフォンに向かって、熱心に語りかけていたのです。
「海斗、誰と話してるんだ? 友達か?」
佐藤さんの問いに、海斗さんは画面を向けました。
「いや、AIだよ。人間と話すよりずっと楽なんだ。否定されないし、24時間いつでも僕のレベルに合わせて答えてくれるから」
画面には、大学での孤立感や、将来への不安をAIに吐露する膨大なログが流れていました。実は海斗さん、入学当初は「大学デビュー」を狙って華やかなテニスサークルの新歓に顔を出していました。しかし、そこは内部進学組がすでに固まってコミュニティを作っており、地方出身の海斗さんは溶け込むことができなかったといいます。
「無理して合わせようとしたけど、結局あいつらのノリにはついていけなかった。飲み会1回で3,000円以上も消えるなんて、今の僕にはコスパが悪すぎるんだ」
海斗さんは淡々と語ります。
「本を買うお金ももったいないから、要約をAIにさせて、効率よく知識だけ入れるようにしている」
「12万円も送れば十分だ」と思い込んでいた佐藤さんは、かける言葉がなかなか見つかりませんでした。かつての相場観で仕送りをしていた父に対し、息子は「高すぎる東京の生活費」と「内部進学組との壁」に挟まれ、経済的にも精神的にも余裕を喪失。海斗さんは孤独を埋めるための唯一の手段として、お金のかからないAIとの対話を選んでいたのです。