年金を生活の柱とするシニア世代にとって、当たり前だった「対面」や「紙」のサービスが消失していく現状は、不便を超えた疎外感をもたらしています。便利になればなるほど、できない人が切り捨てられてしまう社会の歪みはなぜ生まれるのか。ある男性の切実な訴えを通して、現代社会が抱える「置き去りの実態」を浮き彫りにします。
ふざけるな!年金月16万円・72歳男性が激怒。病院の受付で告げられた「まさかのひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

デジタル化で取り残される高齢者たち

総務省「令和6年 通信利用動向調査」によると、個人のスマートフォン保有率は全体で85.6%と高い水準に達しています。ネット利用全体も過半数を超えており、若い世代との差は縮まっています。

 

一方で、年代別のデータを見ると、60代後半から70代では保有率・利用率ともに全年代平均を下回る傾向が続いています。これは「使う人が少ない」のではなく、生活必需レベルで使いこなせていない人の割合が高いことも示唆しています。

 

また、MMD研究所「2024年 高齢者のスマートフォン利用実態調査」では、70代の約3割が「スマートフォンの操作に不安がある」、4割近くが「新しいアプリのインストールに抵抗がある」と回答していました。高齢者の多くは、スマホ自体は持っていたとしても、アプリを主体とした手続きには躊躇や不安を感じているのが現状です。

 

行政・民間サービスのデジタル化は、効率化や利便性向上につながる側面があります。オンライン申請やQRコード決済、ネット予約は確かに迅速です。しかし、技術を「使いこなせる人」と「使いこなせない人」で使い分けられる選択肢が少なくなると、デジタルに対応できない人は手続きそのものが困難になります。

 

現実として、行政手続きや金融サービス、医療予約の多くはオンラインを前提に設計されつつあります。スマートフォンを使わなければ、完結できない手続きが増えているのです。

 

重要なのは、すべてを完璧に使いこなすことではありません。ひとつの予約アプリだけ覚える。銀行の残高確認だけはスマートフォンでできるようにする。あるいは、分からないときは窓口で「やり方を教えてほしい」と具体的に頼む。

 

小林さんが抱いた怒りは自然な感情です。ただ、怒りのままに立ち止まれば、利用できるサービスはさらに減っていきます。一歩踏み出すかどうか。そこがいま、大きな分かれ目となっています。