近年、高齢者世帯を中心に「家を売ってもそのまま住み続けられる」というリースバックが注目を集めています。老後資金の不安を解消する選択肢として紹介されることが多い制度ですが、安易な契約によって「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。ある夫婦のケースを見ていきます。
「一生住めます」は嘘だったの? 〈年金25万円・70代夫婦〉、リースバックの罠にハマり絶望。マイホーム売却後の破産危機に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

リースバック相談急増……背景にある切実事情

田中さん夫妻のようなケースは、決して特殊な事例ではありません。株式会社ヤマトハウステックが発表した『2025年相談実績レポート』によると、リースバックの相談件数は高止まりしているといいます。

 

同レポートがまとめた「リースバック相談理由ランキング」では、第1位が「老後の生活費確保(終活・相続しない選択)」となっており、次いで「事業資金の確保」「住宅ローン返済」が続きます。

 

【リースバック相談理由】

第1位「老後の生活費確保」

第2位「事業資金の確保」

第3位「住宅ローン返済」

第4位「離婚後の住居確保」

第5位「将来の買戻し前提」

 

注目すべきは、第2位の「事業資金」や第3位の「住宅ローン返済」など、切迫した資金需要に基づく相談が多い点です。その背景には、物価上昇や金利上昇に加え、中小企業の資金繰り不安といった社会要因が色濃く反映されています。

 

リースバックで後悔する最大の要因は、多くの人が「家をいくらで買ってもらえるか」という入口の数字にばかり目を奪われ、「毎月いくら払うのか」という出口の設計を軽視してしまうことにあります。

 

リースバックの家賃設定は、一般的に「売却価格×期待利回り」で算出されます。投資家や業者が物件を取得する以上、周辺の家賃相場よりも高くなることも珍しくありません。特に地価が高い都市部では、年金収入に対して過大な家賃負担が生じがちです。

 

また、多くの契約で採用されている「定期借家契約」のリスクも無視できません。これは期間が来れば原則として契約が終了するもので、再契約には貸主の合意が必要です。消費者庁や国土交通省も、リースバック検討時には「契約形態(普通借家か定期借家か)の確認」や「将来の支払い総額のシミュレーション」を徹底するよう注意喚起を行っています。

 

リースバックは、資産を現金化する有効な手段ではありますが、決して万能ではありません。田中さんのように、数年後の資金枯渇に怯えることのないよう、契約前に「いつまで住むのか」「トータルでいくら払うのか」など、客観的に精査することが、最終的に自分たちの生活を守ることに繋がります。