「中学受験は親の受験」といわれるほど、保護者のサポートが不可欠な現在の受験シーン。しかし、その熱意がいつしか親自身の自己実現にすり替わってしまったとき、親子の溝は深まってしまうこともあります。ある母娘のケースから、親の過度な期待が子どもに与える長期的な影響と、現代の中学受験における「伴走」の在り方について、最新調査をもとに紐解いていきます。
「お母さんのコンプレックスを押し付けないで!」中学受験に全力を注いだ45歳母、合格から5年後に娘が放った「絶望のひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

あなたを私の二の舞にはさせない

都内在住の佐藤美咲さん(45歳・仮名)。かつて大手企業で働いていましたが、長女・真由さん(仮名)の出産を機に退職しました。そして5年前、真由さんの中学受験に全力を注ぎます。その背景には、彼女が長年抱え続けてきた「学歴コンプレックス」がありました。

 

美咲さんはかつて、女子最難関校を目指しながらも不合格。滑り止めの私立中学に進み、大学はMARCHの一角を卒業しました。社会人時代、東大や早慶出身の同僚たちにどこか劣等感を抱き、「あの時、第一志望に受かっていれば、私の人生は違ったはずだ」という思いを捨てきれずにいたのです。

 

「自分の人生は中学受験で変わってしまったという思いがずっとあって……娘にはあんな悔しさを味わわせたくない。私がしっかりと支えれば、必ず最高の結果が出るはずだと思っていました」

 

真由さんが小学校4年生に進級する春、進学塾に入塾。美咲さんの生活は塾のスケジュールを中心に回り始めました。膨大なプリントの整理、栄養バランスを考え抜いた弁当作り、そして毎日の進捗管理。真由さんは母親の期待に応えようと必死に勉強し、見事、第一志望の難関校に合格しました。しかし、中学・高校と進むにつれ、母子の間には形容しがたい壁ができていきました。

 

決裂のきっかけは、期末試験を控えた真由さんがスマートフォンを触っていたことでした。美咲さんは、つい強い口調で注意してしまったといいます。

 

「スマホばかり見て! いま頑張らないと希望の学部にいけないわよ。お母さんがどれだけ苦労して、あなたを支えてきたと思っているの!」

 

その瞬間、真由さんは手に持っていたスマートフォンを、リビングの床に叩きつけました。

 

「私の中学受験はお母さんの人生のやり直しだっただけでしょ。お母さんのコンプレックスを私に押し付けないでよ!」

 

砕けた画面をそのままに、真由さんは家を飛び出しました。それ以来、母娘の間には大きな溝が生まれてしまい、今なお修復できずにいるといいます。