35年にわたる住宅ローンを完済し、ようやく手にした「安住の地」。 しかし、長年の大仕事を終えた達成感に浸る間もなく、多くの高齢者を絶望させる「想定外の通知」が届くケースもあります。老朽化が進むマンションに待ち受ける大規模修繕の先に待っているものとは? ある男性の事例を通じ、知っておくべき「公的な救済策」についてみていきます。
やっと35年ローンを終えたのに…年金月17万円・68歳の男性に届いた「300万円の請求書」。修繕不能でスラム化寸前のマンションを救った一手とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの「老い」を救う、管理組合による「高齢者向け返済特例」

高橋さんが活用を提案した手法は、多くの高経年マンションにとって現実的な「救済策」となっています。

 

一般的にマンションの修繕費用は、区分所有者が「一時金」として現金で用意するか、個人でローンを組むと考えられがちです。 しかし、管理組合が主体となって住宅金融支援機構から融資を受ける「マンション共用部分リフォーム融資」という選択肢があります。 これは数億円規模の工事でも、管理組合の総会決議(通常、過半数の賛成)があれば利用可能です。

 

住宅金融支援機構の資料によれば、この融資は年間で200件から300件程度の利用実績があり、融資金額は100億円規模に達しています。 さらに、この融資には「高齢者向け返済特例」という仕組みもあります。 これは、満60歳以上の区分所有者が対象で、毎月の支払いを「利息のみ」とし、元金は本人の死亡時に一括して返済する「リバースモーゲージ型」の仕組みです。

 

この制度の最大のメリットは、新たなローンを組むことが難しい年齢の高齢者でも、管理組合の力を通じて、手元の現金を大幅に減らすことなく住まいを維持できる点にあります。 一時金の支払いが原因で破綻する世帯を出さないことが、結果としてマンション全体の資産価値を守ることに繋がります。

 

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」の結果を見ると、修繕積立金が計画に対して不足しているマンションは約34.8%に上っています。 今後も「数億円の工事費」と「数百万円の一時金」を巡るトラブルは、全国のマンションで頻発することが予想されます。

 

しかし、高橋さんのように行政や公的機関が用意した金融スキームを正しく理解し、管理組合を動かすことができれば、資金難による「修繕の断念」や「生活破綻」という最悪の事態は回避できるかもしれません。