大切な家族との別れは、常に突然訪れるものです。 悲しみに暮れる暇もなく、遺族の前には葬儀の手配から膨大な事務手続き、家財の整理という現実的な課題が山積みとなります。特に親が一人暮らしをしていた場合、その負担は計り知れないものになることも少なくありません。ある親子のケースから、終活の重要性についてみていきます。
すごいよ、親父…79歳で急逝した父が遺した「青いファイル」の衝撃。51歳息子が震えた「完璧すぎる終活」の中身 (※写真はイメージです/PIXTA)

デジタル資産の普及と「見えない遺産」が招くトラブルの現状

小林和男さんのように、アナログ・デジタルの両面で「初動」を意識した準備を行うことは、現代の相続において極めて重要です。

 

総務省『通信利用動向調査(令和6年)』によると、70代のスマートフォンの利用率は79.0%。これに伴い、ネット銀行や証券口座、サブスクリプションサービスといった「デジタル資産」の管理が、終活における新たな課題となっています。

 

経済産業省がかつて公開した検討資料等でも、故人のスマートフォンがロックされているために資産の把握が遅れ、遺族が相続税の申告漏れを指摘されたり、有料サービスの課金が止まらずに不利益を被ったりするケースが指摘されています。和男さんのように、ロック解除の方法とサービス一覧を遺族がすぐ見つけられる形で残しておくことは、家族に余計な苦労をさせないための最も現実的な備えといえます。

 

また、相続全般における紛争の実態も深刻です。 裁判所『司法統計(令和5年度)』の「遺産分割事件数」によると、遺産分割をめぐる争いの約76%が、遺産価額5,000万円以下の家庭で発生しています。さらに、そのうちの約33%は1,000万円以下という、いわゆる一般的な資産規模の世帯です。つまり、相続トラブルは一部の資産家だけの問題ではないのです。

 

こうしたトラブルを未然に防ぎ、家族が円満に次の生活へ踏み出すための終活のポイントは主に3つあります。

 

■「財産の全容」を明確にする

預貯金、不動産、有価証券に加え、クレジットカードやスマホ決済などのデジタル資産も含めた一覧を作成しておくことで、遺された家族の「探し物」の時間を大幅に削減できます。

■「本人の意思」を言葉にしておく

葬儀や納骨の希望はもちろん、なぜこのような財産配分を考えたのかという「理由」を、小林さんのようにエンディングノートやファイルに書き添えておくだけで、遺された側の納得感は大きく変わります。

■「情報の共有場所」を伝えておく

どんなに素晴らしい準備も、見つけられなければ意味がありません。「もしもの時はここを見る」というルールを家族と共有しておくことが、最後のピースとなります。

 

重要事項をあらかじめ「見える化」し、迷いのない道筋を作っておくこと。 和男さんが実践したような「見事な終活」は、単なる身辺整理の枠を超え、遺される子どもたちが悲しみを乗り越え、前を向いて歩き出すための、力強いサポートになります。