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統計から見る「繰上げ受給」のリアル
ここで、改めて繰上げ受給と繰下げ受給の仕組みを整理しましょう。
■繰上げ受給(60歳~64歳):受給開始を1ヵ月早めるごとに0.4%減額(最大24%減)
■繰下げ受給(66歳~75歳):受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%増額(最大84%増)
年金が減る繰上げ受給と、年金が増える繰下げ受給。これだけ見たら、圧倒的に繰下げ受給のほうが多いと考えられますが、実際はどうなのでしょうか。
厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の受給権者で繰上げを選んだ人はおよそ35万人で、全体の1.2%。繰下げを選んだ人はおよそ55万人で、全体の1.9%。
一方、国民年金受給権者で見ると、繰上げはおよそ347万人で10.1%、繰下げはおよそ88万人で2.6%。会社員(厚生年金受給者)では繰下げ受給がわずかに多いものの、国民年金受給者では繰上げ受給を選択する人が一定数いるというのが実情です。
いずれにせよ、繰上げも繰下げも選択せず、従来通り「65歳から年金をもらう」層が圧倒的多数であることに変わりはありません。
繰上げ受給は、早めに亡くなった場合に総受給額が多くなり、また健康なうちに生活の質を高めることができるというメリットがあります。一方で、年金額が一生減額されることや、他の年金の受給に制限が出ること、任意加入ができなくなること、そして何よりも長生きした場合に65歳受給開始よりも総額で下回ることは、デメリットとして語られます。
しかし、佐々木さんのように、何にメリットを感じ、何をデメリットと感じるのかは人それぞれです。年金は長生きのための保険であると同時に、これまでの人生を支えてきた証でもあります。繰り上げという選択は、不透明な未来に対する、ひとつの主体的な決断といえるでしょう。