近年、ハラスメントや過密労働を背景に、精神的な不調をきたして休職を余儀なくされる若者が後を絶ちません。「石の上にも三年」を常識としてきた親世代でも、子の心身を第一に考え、「無理に今の職場に戻る必要はない」と伝えたいもの。ある親子のケースをみていきます。
激務とパワハラに潰された27歳長男、休職1年半を前に憔悴「あの会社には戻るな」と55歳父の痛切な願い (※写真はイメージです/PIXTA)

「1年半」の壁と、休職期間満了後の「自然退職」の現実

一般的に、日本の企業の多くは就業規則において、勤続年数に応じた休職期間を定めています。独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査や厚生労働省の資料によれば、勤続5年程度の社員に対して「1年~1年半」を上限とする企業がボリュームゾーンです。

 

この期間を超えても復職できない場合、多くの企業では「解雇」ではなく、合意の上での「自然退職」という形をとりますが、労働者側からすれば「仕事を失う」という結果に変わりはありません。

 

厚生労働省『令和6年版 過労死等防止対策白書』および関連する調査結果(2025年10月発表の速報含む)では、精神障害による休職・労災申請が深刻な高水準にあることに加え、復職に至るまでのプロセスがいかに困難であるかが示されています。

 

メンタルヘルス不調により休業した労働者のうち、休職期間満了により退職・解雇となるケースは一定数存在し、特に回復が十分でないまま期限に追われて復職を強行することが、再発の最大のリスク要因となっている

出所:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』

 

また、公的な支援制度である「傷病手当金」の支給期間も、かつては通算で1年6カ月が上限でした(現在は法改正により、通算で1年6カ月まで柔軟に受給可能です)。

 

この「1年半」という期間は、社会的にも「経済的・制度的サポートが切れるタイミング」と重なるため、本人や家族にかかるプレッシャーは尋常ではありません。

 

しかし、傷病手当金が切れたあとも、直ちに無収入になるわけではないのです。

 

■失業手当(基本手当)の受給期間延長

本来、病気で働けない間は失業手当を受け取れませんが、ハローワークで手続きをすれば、受給期間を最長4年まで延長できます。体調が回復した段階で受給を開始することが可能です。

■障害年金

精神疾患や身体疾患により、日常生活や労働に支障がある場合、現役世代でも受給できる可能性があります。傷病手当金との併用や、その後の生活の柱として検討に値します。

■自立支援医療(精神通院医療)

精神疾患の通院医療費が原則1割負担(世帯所得により上限あり)になる制度。経済的な固定費を抑えるための有効な手段です。

 

1年半は、人生という長いスパンで見れば、準備期間に過ぎません。外部の専門家も頼りながら、親自身も孤立せずに情報をアップデートしていくことが、本人の希望に繋がります。