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東京湾岸タワマン、ローン完済後に直面した「想定外」
東京都内でも有数の人気エリア、湾岸地区。ここにそびえ立つ築20年ほどのタワーマンションに住む佐藤健司さん(66歳・仮名)は、かつての現役時代を大手金融機関で過ごしました。50代で関連会社へ出向し、60歳で定年退職。絵に描いたようなエリートコースを歩んできたといいます。
「現在は私の20万円ほどの年金と、妻の年金を合わせて月30万円ほどが生活のベースです。4,000万円近い退職金に加え、それなりの貯蓄もありました。老後は何不自由なく暮らせると思っていましたが、ここへきて雲行きが怪しくなってきたのです」
「自分の城」になった瞬間の落とし穴
佐藤さんがこのマンションを新築で購入したのは、40代のころ。当時の販売価格は約8,000万円でした。2,000万円の頭金を入れ、残りは30年ローンを組みます。完済予定は70歳を超えていましたが、現役時代に積極的な繰り上げ返済を行い、定年を前に完済しました。
「ローン返済中は、マイホームとはいえ、どこか借り物のような気がしていました。払い終えて、やっと『自分たちの家だ』と堂々と言えるようになった。あの時は、将来への懸念など何一つありませんでした」
地方出身の佐藤さんにとって、20年過ごしたこの街には深い愛着があります。
「引っ越してきた当初は、見晴らしこそ良いものの活気に欠ける寂しい街でした。それが今や、これほど賑やかで生き生きとした街になった。ここを買って本当によかった、そう満足していたのですが……」
毎月の支払いが「8万円」を突破、年金生活を圧迫
そんな佐藤さんの満足感を打ち消しているのが、タワマン特有の維持費の問題です。建物の老朽化に加え、昨今の建設資材や人件費の高騰が直撃しました。
「管理組合の総会で、修繕積立金の大幅な値上げが可決されました。それまでも段階的に上がってはいましたが、今回は上げ幅が違った。現在、管理費と合わせると、毎月の支払いは8万円を超えています」
住宅ローンがなくなっても、毎月8万円が固定費として消えていく。これは年金暮らしの佐藤さんにとって無視できない負担です。「この生活を維持できるのか」という不安から、最近は売却も視野に入れ始めたと語ります。
「同じ階の間取りが、購入時の2倍近い価格で売りに出されているのを見て驚きました。今が最高値だという専門家の声も聞きます。家への愛着を優先すべきか、それとも資産価値が高いうちに手放すべきか……。かつての隣人たちも、真剣に悩み始めていますよ」