(※写真はイメージです/PIXTA)
「どうして妻が…」
首都圏在住のトオルさんは、新卒から勤めていた会社を定年退職し、退職金1,400万円とそれまでの貯蓄、月22万円の年金を主な老後資金として、セカンドライフを送っていました。住宅ローンも完済し、今後に大きな不安はなかったといいます。
状況が変わったのは、妻のカズコさん(仮名)にすい臓がんがみつかってからでした。すい臓がんは「沈黙の臓器」と呼ばれ、みつかったときには進行していることが多い難治性のがんです。カズコさんは抗がん剤や放射線など、主治医が提示する標準治療に取り組みました。
告知を受けた際、トオルさんは激しく動揺しました。「どうしてカズコなんだ。酒もタバコも散々やってきた俺ならまだわかる。真面目に生きてきたあいつがなんでこんな目に遭うんだ……」理不尽な現実にトオルさんは自分を責めました。
当初の治療費は高額療養費制度のおかげで、累計150万円程度。老後資金を大きく取り崩すことなく、希望を繋いでいきます。しかし数年後、がんは無情にも肺や肝臓へと転移。ついに主治医から「非情な通告」を突きつけられる日がやってきます。
「もう治療法はありません」
「残念ながら、いまカズコさんに提供できる治療は、やり尽くしました。今後は在宅医療に切り替え、緩和ケアに専念しましょう」
長年信頼してきた主治医の口から出た「治療終了」の言葉。トオルさん夫妻には、それが「死の宣告」であり、同時に「見捨てられた」という絶望として響きました。カズコはまだ自力で歩ける、食事もできる。それなのに、なぜ死を待つだけなのか。
帰宅後、トオルさんはカズコさんの手を握り、涙を流しました。「俺が先に死ぬと思っていた。一人残されたくない。頼むから死なないでくれ……」まだ諦めたくないという一心で、トオルさんはスマホの検索窓に【すい臓がん 末期 治る】と打ち込みました。