日本の年金制度は「世代間の助け合い」を掲げていますが、その内実を詳しく紐解くと、現代のライフスタイルにそぐわない歪みが至る所に潜んでいます。たとえば「遺族年金」。あまりに理不尽なルールに衝撃を受ける……そんなシーンが配偶者の死という局面で訪れることも。ある女性のケースから、現行制度の構造的な課題と、共働き世帯が知っておくべき年金受給の厳しい現実についてみていきます。
「40年も頑張って働いたのに…」年金月15万円・68歳元共働き妻が直面する「年金ルール」に、「納得がいかない」と憤る理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

元正社員・68歳女性が感じた、制度への猛烈な違和感

都内の中堅メーカーで、60歳定年まで働いていた佐藤玲子さん(68歳・仮名)。20代で結婚し、2人の子どもを育てながらも、当時はまだ珍しかった「産休・育休」をフル活用してキャリアを継続してきました。

 

「仕事も好きでしたし、でも家事も、子育ても完璧にしたかった。当時は時短勤務なんて言葉もありませんでしたから、毎日が戦いでした。それでも夫も協力的で、何とか定年まで勤め上げることができたんです」

 

しかし、佐藤さんの夫・太郎さんは3年前に他界。「これまで頑張って働いてきたんだから、老後は夫婦で楽しく暮らしていこう」と話していた矢先のこと、突然の不幸で茫然自失だったと言います。しばらく何もする気が起きない日々。何とか、太郎さんの死後の手続きをしなければと思い立ち、訪れた年金事務所で、担当者から告げられた説明に彼女は耳を疑ったと振り返ります。

 

「担当者の方は淡々と、『佐藤さんの場合は、ご自身の老齢厚生年金が優先的に支給されます。遺族厚生年金は、ご自身の年金額との差額分しか受け取れません』と言ったんです。難しくて、何を言っているのか分からなかったんですが、私が追加で受け取れる遺族年金は、たった2,000円だというんです」

 

現在のルールでは、65歳以上の受給者に遺族厚生年金が発生する場合、まず「自分自身の老齢厚生年金」が全額受給となり、遺族厚生年金の額がそれを上回る場合にのみ、その差額が加算される仕組みになっています。つまり、佐藤さんが受け取る「老齢厚生年金」の額が亡夫の遺族厚生年金の額に近ければ近いほど、自身が支払った保険料の“見返り”は、制度上、消滅したように見えてしまうのです。

 

「保険料を払った分だけ、年金が受け取れるわけではないとか、二重で年金はもらえないとか、理屈は理解しているつもりなんです。ただ、40年間必死に働いて保険料を納めてきた。それなのに遺族年金は受け取れないとなると、悔しい気持ちになります。理屈は分かるのですが……」