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女性の厚生年金加入と、依然として残る昭和の制度設計
佐藤さんが感じた「理不尽」の正体は、厚生労働省が定める年金受給の「併給調整」というルールにあります。
厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1種)の受給者平均月額は、男性が17万3,033円に対し、女性は10万4,797円に留まります。この格差は過去の労働環境を反映したものですが、注目すべきは遺族年金との関係です。
現行制度では、65歳以降に「自分自身の老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」の両方の受給権がある場合、平成19年(2007年)の法改正により、以下の順序で支給されることになりました。
① まず「本人の老齢厚生年金」を全額支給する
② 「遺族厚生年金」の額が「本人の老齢厚生年金」よりも多い場合、その「差額」を遺族厚生年金として支給する
このルールの名目は「自分自身の保険料に基づいた年金を優先的に受け取る」という、一見するともっともらしいものです。しかし、共働きで高い保険料を納めてきた女性ほど、遺族年金の受給額が削られる(相殺される)という結果を招いています。
かつての日本では、夫が外で働き妻が家庭を守る「専業主婦世帯」が多数派。このモデルであれば、妻は自身の老齢厚生年金を持たないため、夫が亡くなれば遺族厚生年金を全額受け取ることができ、生活の柱となります。しかし、共働き世帯の場合、妻が自分のキャリアで保険料を納めれば納めるほど、将来の遺族年金というセーフティネットの恩恵を、自分自身の権利で相殺してしまう形に見えてしまいます。
さらに、社会保険料の負担についても不公平感が指摘されています。専業主婦(第3号被保険者)は、自身で保険料を直接納める必要がありません。一方で、佐藤さんのようにフルタイムで働く女性は、給与から決して少なくない額の厚生年金保険料が天引きされ続けます。しかし、配偶者の死という局面において、場合によっては専業主婦の方が年金支給総額が高くなるケースも珍しくありません。
日本年金機構の資料でもこの「充当(相殺)」の仕組みは明記されていますが、多くの人が受給開始年齢になって初めてこの事実に直面し、驚きを隠せません。少子高齢化が進み、女性の社会進出が叫ばれる一方で、年金制度の根幹部分には、いまだに「夫が主、妻が従」という昭和の家族観に基づいた調整ロジックが色濃く残っています。