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4 ―― 特例ルール(いわゆる名目下限ルール):当面の受給者に配慮しつつ、将来の受給者へも配慮
1|特例創設時の考え方:特例該当はまれと考え、当面の受給者の生活に配慮
基本的な仕組みは上記のとおりだが、年金財政健全化のための調整ルール(マクロ経済スライド)には特例ルール(いわゆる名目下限ルール)が設けられている。特例ルールは、a:基本ルールどおりに調整率を適用すると調整後の改定率がマイナスになる場合と、b:本来の改定率がマイナスの場合、に適用される(図表5左の特例aと特例b)。大雑把に言えば、特例aは物価や賃金の伸びが小さいとき、特例bは物価や賃金が下落しているときに適用される。
特例aの場合は、単純に調整すると調整後の改定率がマイナスになるので、名目の年金額が前年度を下回ることになる。そこで、既に引退して公的年金以外に収入源が乏しい受給者の生活への影響を考慮し、実際に適用される調整率の大きさ(絶対値)を本来の改定率と同じ大きさ(絶対値)にとどめて、調整後の改定率がゼロ%にされる(年金額が前年度と同額になる)。特例bの場合は、本来の改定率がマイナスなので、この場合も名目の年金額が前年度を下回ることになる。そこで、年金財政健全化のための調整を行わず、本来の改定率の分だけ年金額が減額改定される。
2|特例見直し時の考え方(2016年改正):特例該当の頻発に対処するため、未調整分を繰越し
2017年度までは、これらの特例ルールに該当した場合に生じる未調整分が繰り越されていなかった。しかし、過去の多くの年度で特例に該当する状況だったため(図表6)、2016年の法改正で未調整分の繰越しが導入された。具体的には、2018年度分から未調整分が累積され、2019年度以降で特例に該当しない年度、すなわち基本ルールどおりに当年度の調整率を適用しても調整後の改定率がプラスになり、さらなる調整余地が残っている年度に、当年度分の調整と未調整分を合わせて調整する仕組みになった(図表5右の繰越適用(原則)、厚生労働省の資料では「キャリーオーバー」と称される仕組み)。
なお、当年度分の調整率と繰り越した未調整分の合計を適用すると調整後の改定率がマイナスになる場合には特例aが適用され、当年度の調整率と未調整の繰り越し分の合計のうち本来の改定率と同水準までを調整して調整後の改定率はゼロ%になり、未調整分はさらに繰り越される(図表5右の繰越適用(特例a))。また、本来の改定率がマイナスの場合には特例bが適用され、当年度の調整率と未調整の繰り越し分の合計がさらに繰り越される(図表5右の繰越適用(特例b))。
(注3)「67歳以下」は「67歳になる年度まで」、「68歳以上」は「68歳になる年度から」を指す。
(注4)調整パターンは図表5のパターンを指し、左が67歳になる年度まで、右が68歳になる年度から、を指す。
(注5)厳密には、68歳到達年度の前年度からの繰越分には67歳到達年度の「67歳到達年度まで」の繰越分が用いられ、以後は「68歳到達年度から」の繰越分で更新される。このため、未調整分が存在する場合には生まれた年度によって改定率が異なる可能性がある。
(資料)社会保障審議会年金部会(2018.7.30)資料2。厚生労働省年金局「年金額改定について」(各年)。

