シニア世代の婚活が活況だといわれますが、「老後は気の合うパートナーと穏やかに過ごしたい」などと淡い期待を抱きつつ、想像以上の厳しい現実に直面することも珍しくないといいます。69歳で婚活を始めた、ある独身男性のケースをみていきます。
「施設に入るお金はありますか?」資産8,000万円・69歳独身男が絶句。婚活相手が手帳に書き留めた「衝撃の9文字」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「独身貴族」の自信が崩れ去った、ある冬の夜

「若いころから『結婚なんてしても自由がなくなるだけだ』と思っていました。好きな車に乗って、好きなものを食べて、稼いだ金は全部自分のために使う。それが一番賢い生き方だと信じていましたから」

 

都内のヴィンテージマンションで1人暮らしをする佐々木健一さん(69歳・仮名)。現役のころは大手企業に勤め、堅実な資産運用で現在の貯蓄は約8,000万円だとか。一度も結婚歴のない、いわゆる「生涯独身」を貫いてきた男性です。

 

そんな佐々木さんが、最近になって婚活を始めたといいます。きっかけは、自身の体に起きた異変でした。ある冬の夜、風呂場で立ちくらみを起こし、そのまま冷たいタイル床の上で動けなくなってしまったのです。幸い、大事には至らず翌朝には回復しましたが、その時の「心細さ」がトラウマになったとのこと。

 

「『もしこのまま死んでも、数週間は誰にも見つからないだろうな』と冷静に考えてしまって。自由だと思っていた生活が、急に孤独に思えてきて。ただ家に誰かがいる安心感が欲しくなって、結婚相談所に入会しました」

 

入会当初、佐々木さんは楽観的でした。「資産も経歴もある。相手に多くは望まないし、話し相手になってくれる同世代がいればすぐに決まるだろう」と。しかし、いざお見合いが始まると、佐々木さんの想定とは異なる会話が繰り広げられました。

 

最初にお見合いをしたのは、62歳の元会社員の女性。挨拶もそこそこに、2度目の食事で彼女は手帳を開きながらこう切り出しました。

 

「佐々木さん、将来もし介護が必要になった場合、ご自宅での介護をご希望ですか? それとも施設に入られる予算は確保されていますか?」

 

佐々木さんは言葉に詰まりました。まだお互いの性格も知らない、好き嫌いも話していない段階での、あまりに事務的な問いかけだったからです。しかし、ここで嘘をついても仕方ありません。「……あえて言うなら、寂しいので自宅でしょうか」と佐々木さんが答えると、彼女は表情ひとつ変えず「なるほど」と頷き、手帳に何かを書き留めました。その手元が、ふと佐々木さんの目に入りました。そこには『在宅希望のため却下』と、衝撃の9文字が並んでいたのです。

 

「彼女だけかと思ったら、次に会った女性もそうでした。『今のマンションはバリアフリー対応ですか?』『万が一の時の成年後見人は?』と……私は一緒に旅行に行ったり食事をしたりするパートナーを探していたんですが、彼女たちは、老後の生活の保証人を探しているようでした」

 

「やはり、自分には結婚は向いていないのかもしれない……」、佐々木さんの婚活はうまくいっているとは言い難い状況です。