「楽して稼げる仕事はない」大人は経験則で知っていても、社会に出る前の若者にとって、その境界線はあまりに曖昧です。近年、大学生をターゲットにしたトラブルは複雑化しています。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例から、親子で共有すべきリスク管理を考えます。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
な、なにやってんだ…年収350万円の50歳父、上京した大学生息子から届いた「大企業内定」の吉報がクリスマスに一変。両親を凍らせた「戦慄のひと言」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

両親の決断

クリスマス当日の夜。孤独と恐怖に耐え切れなくなったAさんは、震える手で実家に電話をかけました。

 

「……投資詐欺に引っかかったかもしれない。ローンが返せず、闇バイトみたいな仕事を紹介されて……」電話がかかってきたとき、ちょうどショートケーキを食べていた両親は愕然としました。

 

「な、なにやってんだ! なぜそんなグループに入ったんだ!」父は激昂しましたが、事態の深刻さを即座に理解しました。「その仕事は、絶対に引き受けてはいけない」両親はすぐに現金を振り込み、Aさんに一括返済とグループからの脱退を命じました。親の助けにより、Aさんは残金25万円と利息を清算し、なんとか泥沼から抜け出すことができたのです。

 

その後、Bさんは別の学生をカモにしようと声をかけているという噂を聞きました。Aさんは彼と距離を置き、やがてBさんの姿を大学でみかけることはなくなりました。

「真面目な子」ほど狙われる

Aさんのケースでは、大学生をターゲットにした投資詐欺やマルチ商法、あるいは闇バイトへの入り口が複合的に組み合わさっています。若者の心の隙間に入り込む悪質な手口は多様化しています。まさか真面目な我が子が、犯罪スレスレのトラブルに巻き込まれているとは思ってもみないでしょう。しかしAさんのように、真面目で、友人を裏切れず、親に心配をかけたくないという責任感の強い若者ほど、「自分でなんとかしよう」と抱え込み、犯罪グループの格好の餌食になりがちです。

 

Aさんのご両親がいうように、楽して稼げる仕事はありません。オイシイ話の裏には、必ず法外なリスクが潜んでいます。新生活の不安や孤独につけ込む悪質な誘いから身を守るために、迷ったときは即答せず、信頼できる大人や公的機関に相談する勇気を持ってください。

 

〈参考〉

※金融庁:貸金業法のキホン
https://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/kihon.html

金融庁:“オイシイ投資話”にご注意!!!!
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/oishiitoushibanashi.html

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

共同代表