「楽して稼げる仕事はない」大人は経験則で知っていても、社会に出る前の若者にとって、その境界線はあまりに曖昧です。近年、大学生をターゲットにしたトラブルは複雑化しています。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例から、親子で共有すべきリスク管理を考えます。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
な、なにやってんだ…年収350万円の50歳父、上京した大学生息子から届いた「大企業内定」の吉報がクリスマスに一変。両親を凍らせた「戦慄のひと言」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

友人からの誘い

大学2年生になったある日、友達のBさんからある誘いを受けます。

 

「お前、仕送りがないっていってただろう。簡単に稼げるバイトがあるんだ。投資の勉強もできて、金も稼げて一石二鳥だからやってみないか」と誘われます。

 

Aさんは両親から常に、「楽して稼げる仕事はない」「お金の貸し借りをしてはいけない」といわれてきました。一度は躊躇したAさんですが、「嫌ならすぐにやめても大丈夫だから」というBさんの言葉を信じ、「とりあえず1回だけ」と面接を受けにいきます。

 

喫茶店で行われた面接には、20代前半ぐらいの男性が2人。説明された仕事内容は、スマホを使った簡単な作業でした。「こんなに楽にお金が稼げるのか」とビックリしたAさんは、いまのバイトと掛け持ちすればお小遣いが増える、とBさんの勧誘にのることに。

 

さらに、「投資勉強会に参加してみて」と案内されます。会場には20人ぐらいの大学生が集まっており、20代のリーダー格の男性が熱弁を振るっていました。「俺は投資で1,000万円以上利益がでている。この勉強会に参加し続ければ、500万円ぐらいはすぐに稼げる」そんな話をしています。

 

夢のような話に半信半疑のAさん。継続参加するには入会金として10万円必要だと告げられ、現実に引き戻されました。「そんなお金はない」と帰ろうとしたところ、Bさんが囁きます「学生でもお金を貸してくれるところがあるから」。

 

「10万円なんて借りても返せないから」とAさんは断りますが、「実はAさんを紹介したことで5万円、勉強会から紹介料をもらえたんだ。お前も友達を2人連れてくればすぐ返せるから」とBさんが返します。

 

勉強会が終わると、Aさんは勉強会に来ていたほかの学生と一緒に学生ローンの事務所に連れていかれました。署名しただけで手渡された10万円は、そのまま右から左へ、参加費として消えました。手元に残ったのは、借金だけ。「本当にこれでよかったのだろうか……」不安が頭をよぎりました。