定年退職は人生の大きな節目であり、まとまった退職金で長年の夢を叶えたいと願う人は多いもの。たとえば「いつかは乗ってみたい高級車」という想い。長きにわたる勤労へのご褒美として、憧れの高級車は魅力的に映りますが、その高揚感はしばしば、老後の生活防衛を第一に考えるパートナーとの間に、決定的な溝を生む原因となります。ある夫婦のケースをみていきます。
 「最後くらいポルシェに乗らせてくれ」退職金2,000万円・60歳夫の“男のロマン”を粉砕した、専業主婦の58歳妻の「トドメのひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

シニアの「高級車買い」は資産寿命を縮める最大のリスク

パーク24株式会社が2023年に行った『憧れのクルマに関するアンケート』によると、一度は乗ってみたいと思う憧れのカーブランドは、「レクサス」16%でトップ。2位は「ポルシェ」10%、3位は「フェラーリ」・「BMW」・「メルセデス」が9%と同率となりました。

 

山下さんのように「人生で一度くらいはポルシェ」などと、夢をもつ人は多いかもしれません。しかし車好きではないパートナーにとっては、理解しがたいものでしょう。

 

特に納得できないのが、「そんなにお金をかける必要があるのか」という点です。

 

ソニー損害保険株式会社『全国カーライフ実態調査』によると、月あたりの車の維持費は平均1万4,100円。ドライバーが負担に感じる諸経費としては、トップが「ガソリン代・燃料代」66.0%、「自動車税」62.8%と続きます。

 

車は購入時だけでなく、維持費もじわりじわりと負担になります。特に輸入車やスポーツカーは、部品代や保険料が割高です。

 

一方で、総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、無職の高齢夫婦の1カ月の家計収支は平均3万~4万円の赤字。足りない分は貯蓄から取り崩すことになります。そのような老後において、固定費の見直しは必須。そう考えると、定年後「人生で一度くらいは高級車」の夢を叶えることは、かなり高いハードルであることは明らかです。

 

[参考資料]

パーク24株式会社『憧れのクルマに関するアンケート』

ソニー損害保険株式会社『全国カーライフ実態調査』

総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』