(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢者の事故は「交通事故」より「家の中」が多い現実
東京消防庁のデータによると、事故で救急搬送された高齢者は、令和3年で7万3,610件。過去5年、毎年7万~8万人が運ばれています。
そして、その8割が「転ぶ」事故。さらに60.4%が住宅など、居住場所における事故です。
発生場所としては、トップは「居室・寝室」。以下、「玄関・勝手口等」、「廊下、縁側、通路」、「トイレ・洗面所」、「台所・調理場・ダイニング・食堂」と続きます。
一方、救急搬送の1割を占める「落ちる」事故については、78.7%が住宅など、居住場所における事故でした。
こちらの発生場所としては、トップが「階段」。次いで「ベッド」、「椅子」、「脚立・踏み台・足場」、「エスカレーター」の順となっています。
高齢になると、筋力の低下だけでなく、平衡感覚や視力の衰えにより、わずかな段差や滑りやすい床が命取りになります。
山本さんの事例のように、大腿骨を骨折すると、そのまま寝たきり状態になり、急激に認知機能や身体機能が低下する「廃用症候群」に陥るケースが後を絶ちません。また、親世代には「もったいない」「家を傷つけたくない」という意識が強く、手すりの設置や段差の解消といったバリアフリー改修を拒むケースも。しかし、事故が起きてからかかる医療費や介護費用、そして家族の精神的・時間的負担は、リフォーム費用を遥かに上回ります。
親が元気なうちにこそ、家族が主導権を握り、「転ばぬ先の杖」ならぬ「転ばぬ先の改修」を強行することも、親を守るための重要な親孝行といえるかもしれません。事故はいつも、「昨日までは大丈夫だった」という日常に潜んでいるのです。
[参考資料]
東京消防庁『救急搬送データからみる高齢者の事故』