会社を辞めても、給付金を最大限もらえばしばらく安泰――。 仕事に疲れ、将来に不安を抱えるビジネスパーソンにとって、そんなSNS上の広告は魅力的に映るかもしれません。しかし、その甘い誘いの裏側には、高額な手数料だけでなく、法を犯す危険な落とし穴が潜んでいる恐れがあります。 ある男性のケースをみていきましょう。
「失業手当が増えますよ」につられて…手取り月28万円・給与不満で退職した39歳サラリーマン、申請サポート業者のひと言に戦慄 (※写真はイメージです/PIXTA)

国民生活センターも警告。「不正受給」の共犯になるリスク

佐藤さんのようなトラブルが増えています。 2025年12月3日、国民生活センターは「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意」という情報を発表しました。

 

同センターによれば、SNSの広告などをきっかけに、「給付金が数百万円もらえる」と勧誘し、高額な手数料(数十万円単位)を請求するトラブルが相次いでいます。 PIO-NET(消費生活センター等からの経由相談は含まれていない)における「失業保険の申請サポート」に係る相談件数をみていくと、2024年は同年10月までに90件だったのが、2025年は同年10月までに216件。実に2.4倍に増えています。

 

なかには、佐藤さんのケースのように、本来受給要件を満たさないにもかかわらず、「うつ病を装って診断書を取得しろ」「就労不能であることを装え」と、指南役が不正受給をそそのかす悪質な事例も確認されているとのことです。

 

ここで重要なのは、業者の口車に乗って虚偽の申請を行った場合、罪に問われるのは「申請者本人」であるという事実です。 不正受給が発覚すれば、受給した額の返還はもちろん、最大で「受給額の3倍」の納付が命じられたり、最悪の場合は詐欺罪で刑事告発されたりする可能性すらあります。

 

「申請のプロ」を自称する業者が、実は詐欺の教唆犯であるケースは少なくありません。おいしい話の裏には、人生を棒に振るリスクが潜んでいることを知っておく必要があります。

 

[参考資料]

国民生活センター『失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意-不正受給を促すかのようなケースも!-』