(※写真はイメージです/PIXTA)
なぜ妻は長女に嫉妬したのか?
「当時は給与も少なかったし、妻のお腹には長女がいましたから。『たった1日のパーティに数百万円も使うなんて馬鹿らしい。その分、子どものために貯金しよう』というのが、私たちの共通認識でした」
そう振り返るのは、都内のメーカーに勤務する大野健司さん(53歳・仮名)。25年前、当時25歳だった妻・美佐子さん(50歳・仮名)とは、いわゆる「ナシ婚」で結ばれました。
「妻も『そうだね、今はお金が大事だし、お腹も大きいからドレスは恥ずかしい』と。婚姻届を出して終わり。私たちは『流行りに流されない、堅実な夫婦』だと、ちょっと誇らしい気持ちさえあった」
実際、浮いた費用のおかげでマイホームの頭金も用意でき、2人の子どもは何不自由なく育ちました。その選択は100%正しかった。健司さんはそう信じて疑わなかったといいます。
転機は昨年、25歳になった長女の結婚式でした。式自体は滞りなく終わったそうです。
「私自身は、『これが花嫁の父かぁ』なんて、感動の余韻に浸っていたんですが、どうも妻の様子は少しおかしかったんです」
すると、美佐子さんから衝撃的な告白が――。
「……ごめん。私、ずっと嘘ついてた。私ね、今日、自分の娘に嫉妬しちゃった」
思わず「はぁ?」と首を傾げてしまいました。娘に嫉妬とは、どういうことかと。話を聞くと、
「25年前、『式はいらない』と言ったのは嘘だと気づいた。長女を身ごもっていたのでウエディングドレスは諦めたが、本当は着たかった。ドレスを諦める原因となった娘のドレス姿を見て、嫉妬している自分がいた」
と美佐子さん。四半世紀、感情を押し殺していたわけです。
「まさか、ドレスを着たいと思っていたなんて、想像すらしていなかった。しかし『式なんてなくてもいいよな』と私が押し付けたところもあったのかなと。彼女はずっと『物わかりのいい妻』を演じてきたと思うんです」