地域コミュニティが希薄化し、親子が社会から孤立しやすい現代。学校という居場所を失った子どもたちにとって、スマホやゲームは唯一社会と繋がれる「命綱」です。しかし、その依存が親子の断絶を招き、ときに「家庭内暴力」という悲劇的な形でのSOSに変わることもあります。デジタル犯罪などのリスクから子どもを守りつつ、どうやって家庭を「安全基地」に再構築し、未来への希望を育むのか。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校児の行動に対する親としての対応を解説します。
スマホにしがみつく不登校児…「没収」は最悪の一手。「ネット・ゲームがすべて」になる前に、親子で“破られる前提”の約束を結ぶことを児童精神科医が勧める理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもに暴力を振るわれたら…キーパーソンは父親

不登校が長期化すると、家庭内暴力に発展することがあります。暴力は「思うようにならない」ことによるイライラの暴発であり、幼児返りの延長でもあります。たいていの場合、それは母親に向けられます。

 

暴力や暴言は毅然として否定する

暴力に対する対応は、距離をとることが基本です。驚いたりひるんだりせず、さっとその場を離れましょう。その場で説教したり、暴力や暴言で止めようとしたりするのは避けます。また、暴力で要求が通ったという経験をさせないことが大事です。

 

子どもの暴言や暴力は、不満やいらだち、焦燥感など苦しい気持ちのあらわれです。親が登校を迫ったり、将来の話題をもち出したりすると、衝動的に反発して暴力に及ぶことがあります。こうしたつらい気持ちを受け止めることは大切ですが、それは暴力を受け入れることではありません。どんな暴力も認めず、毅然とした態度で拒否してください。子どもが落ち着いたら「暴力を振るわれては、一緒に考えられない」ことをはっきり伝えましょう。「行動は止める。でも、気持ちは聞くよ」という姿勢を伝えます。

 

父親、もしくは第三者の介入が効果的

暴力だけでなく大声で騒ぐ、物を壊すなどの衝動行為も見逃してはなりません。父親が制止したほうがいいでしょう。父親がいないときに起きやすいので、暴力が始まったら可能な限り距離を空けましょう。

 

暴力がくり返し発生する場合には、警察の関与も必要です。母親はホテルや実家、シェルターなどへ避難し、父親は家に留まり様子を見ます。その後、子どもが落ち着いたら、父親は子どもと話し合い、安全に配慮しながら段階的に母親を帰宅させます。

 

父親は子どもにとっては力の象徴です。子どもが暴力に訴えたからといって自分も暴力で子どもを罰しようとしてはいけません。あくまで限界を越えそうになったら押し戻す程度に加減しましょう。母親が弱腰である一方、父親が一切聞く耳をもたずに登校を強制する家庭では、コミュニケーションが成り立たず暴力に発展しやすいので注意してください。

 

〈「死にたい」という言葉をもらしたときは〉

子どもが「死にたい」ともらすのは、SOS のサインです。自己否定感が強くなり、未来に希望がもてず「生きていけない」と感じるのです。このようなときは否定や批判をせず、子どもの話に耳を傾け「あなたが大事」という思いを静かに伝えます。くり返される場合は、カウンセリングや精神科の受診も検討してください。