地域コミュニティが希薄化し、親子が社会から孤立しやすい現代。学校という居場所を失った子どもたちにとって、スマホやゲームは唯一社会と繋がれる「命綱」です。しかし、その依存が親子の断絶を招き、ときに「家庭内暴力」という悲劇的な形でのSOSに変わることもあります。デジタル犯罪などのリスクから子どもを守りつつ、どうやって家庭を「安全基地」に再構築し、未来への希望を育むのか。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、不登校児の行動に対する親としての対応を解説します。
スマホにしがみつく不登校児…「没収」は最悪の一手。「ネット・ゲームがすべて」になる前に、親子で“破られる前提”の約束を結ぶことを児童精神科医が勧める理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが夢を語り出したら…

家庭という安全基地で過ごすうちに、子どもの精神は安定してきます。親は「そろそろ登校しないかな」と背中を押したくなりますが、子どもの心に余裕ができて「再チャレンジ」の準備が整うまで待ちましょう。

 

非現実的な夢に思えてもけっして否定しない

たとえば母親とふたりでお茶をしているときや、ソファでくつろいでいるときなど、子どもがふと「学校に行こうかな」「高校に行きたいな」などと口にすることがあります。または「将来は〇〇になりたいな」など、思ってもいなかった夢について語り始めることもあります。

 

このように、子どもが夢や希望について語り始めたら、再始動の合図です。そうしたら、その内容がどんなに非現実的に思えても否定せず、耳を傾けてください。もちろん、「待ってました」とばかりに親主導で子どもを動かそうとするのはやめましょう。

 

将来について語る子どもの心には、外に向かって動き出す振り子のエネルギーが満ち始めています。「こうなりたい」「こうしたい」という将来への思いを大事にしましょう。

 

ゴールは「登校」ではなく、「本人らしい生き方の発見」

大切なのは親がゴールを決めないこと。ゴールは元の学校に戻ることだけではありません。親の期待は横に置き、子どもの思いを尊重します。不登校になった子には「待つこと」と「動けるようになったらいつでも相談に乗るよ」というメッセージが大事だとお話ししました。親の「手伝う」姿勢が必要となるのは、まさにこのタイミングです。

 

でも、先回りして手出し口出しをするのはやめましょう。子どもは自分のペースで進みたいのです。親はサポート役に徹してください。

 

長期間中学校や高校に通っていなくても、希望の大学に進む人はたくさんいます。海外留学やボランティア活動を通して、自分の夢を実現する人も多いでしょう。昔と異なり人生は多様化しており、いつからでもどこからでも自分らしい人生を生きることは可能です。

 

思春期の子が語る夢はけっして「夢物語」ではありません。子どもが自分の道を見つけ動き出すまで、親は焦らず支えてほしいと思います。

 

〈進路が決められず不登校になる子どもも多い〉

自分の意思で進路が決められず、不登校になる子もいます。また、親が希望するような進路を選択しなかったことへの葛藤や、将来の見通しが立てられないことへの不安が引き金になって登校できなくなる子もたくさんいます。価値観が多様化するなか、進路や就職の選択肢も多様化しています。親は子どもの気持ちを受け止め、子どもが自分らしい人生を自ら探し出すまで、焦らず支援してほしいと思います。

 

 

齊藤 万比古

恩賜財団母子愛育会

愛育研究所顧問