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50代からでも遅くない「時間を味方につける」資産形成術
田中さんのように、50代になってから慌てて資産形成を考えるケースは珍しくありません。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』によると、50代世帯の金融資産保有額の中央値は「300万円」です。平均値こそ1,147万円と高いですが、一部の富裕層が引き上げているだけで、実態としては多くの50代が、教育費や住宅ローンのピークと重なり、老後資金の確保に苦戦している様子がうかがえます。
「50代からの投資は遅すぎる」という声もありますが、必ずしもそうではありません。人生100年時代といわれる今、60歳で定年を迎えても、その後20年、30年と人生は続きます。再雇用などで65歳や70歳まで働くことが一般的になった現在、運用期間を「定年まで」ではなく「資産を取り崩すその日まで」と捉えれば、15年以上の長期運用が十分に可能です。
たとえば、50歳から毎月5万円を積み立てていった場合、シミュレーションは以下のようになります。
・年利0%の場合: 60歳で600万円、年金を受け取り始める65歳なら900万円と、1,000万円目前に。
・年利1%で運用: 60歳で631万円、65歳で970万円に。
・年利2%で運用: 60歳で663万円、65歳で1,047万円に。
・年利3%で運用: 60歳で697万円、65歳で1,223万円に。
・年利4%で運用: 60歳で733万円、65歳で約1,273万円に。
・年利5%で運用: 60歳で772万円、65歳で1,324万円に。
さらに、新NISA制度なら非課税保有期間が無期限化されます。定年後もすぐに全額を現金化せず、運用しながら必要な分だけ取り崩すことで、資産寿命をさらに延ばすことが可能です。
また晩婚・高齢出産も珍しくなくなっている昨今、教育費の終了と自身の老後はほぼ同時にやってくるケースも。しかし、田中さんの事例が示す通り、50代からでも「積立投資」を始めれば、老後を見据えてしっかりと準備を整えることができるはずです。
重要なのは、周囲の雑音に惑わされず、1日でも早く始めること。その小さな差が、10年後、15年後、安堵の涙を流せるかどうかの分かれ道となります。
[参考資料]
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』