親が亡くなったあと、想定外の資産状況に直面し、遺された家族が困惑するケースは少なくありません。「うちは大丈夫」と思っていても、実際は異なることも。ある親子のケースをみていきます。
「年金月10万円・貯金2,000万円」要介護3・82歳母、永眠…「築55年の実家」を訪れた53歳長男、仏壇裏で発見した「茶封筒の中身」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

「親の片付け」を手伝いたい子は8割…親子間に横たわる「意識のズレ」

親が亡くなった後、想定していなかった「お金の事実」に直面し、残された家族が困惑する、というケースは珍しいことではありません。このような事態を避けるためには、親が元気なうちに資産状況を把握し、家の片付けや物の整理について話し合っておく「生前整理」が一つの手。しかし実際には、親子間でのコミュニケーションはそう簡単ではないようです。

 

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護が実施した『生前整理・片付けに対する意識調査』によると、親の生前整理や実家の片付けについて、「手伝いたい(一緒に行いたい・代わりに行いたい)」と回答した「子世代」は全体の80.3%に上りました。多くの子世代が、親の負担を減らしたい、あるいは将来的なトラブルを防ぎたいと前向きに考えていることがわかります。

 

一方で、「親世代」に対して「生前整理や家の片付けを家族に手伝ってほしいか」と尋ねたところ、「手伝ってほしくない(あまり手伝ってほしくない・まったく手伝ってほしくない)」と回答した人は57.6%と、約6割に達しました。

 

子どもは「手伝いたい」と思っているのに、親は「自分でやりたい」あるいは「放っておいてほしい」と感じている。この意識のズレが、結果として「何も整理されないまま親が亡くなる」という状況を生み出しているといえます。

 

親が手伝ってほしくない理由としては、「自分のペースでやりたい」「まだ元気だから必要ない」といった自尊心や、プライバシーを守りたいという心理が働いていると考えられます。佐藤さんの母・ヨシコさんが「2,000万円あるから大丈夫」と言い張ったのは、子どもに心配をかけたくないという親心と、自分のお金の使い道(寄付)について口出しされたくないという思いがあったのかもしれません。

 

しかし、情報が共有されていないことは、遺された家族にとって大きなリスクとなります。今回のケースでは、多額の使途不明金が「寄付」であったことが判明しましたが、もしこの茶封筒や感謝状が見つからなければ、健二さんは「誰かに盗まれたのではないか」と疑心暗鬼になり、不必要なトラブルや精神的苦痛を抱え続けた可能性があります。

 

実家の片付けや資産の整理は、単に物を減らす作業ではありません。親がどのような思いで財産を使い、どのように最期を迎えたいかという「意思」を家族で共有するプロセスでもあります。「うちは大丈夫」と思っているご家庭こそ、年末年始やお盆など家族が集まるタイミングで、実家の片付けや通帳の管理について、少しずつ話題に出してみることが大切です。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『生前整理・片付けに対する意識調査』