長年実績を積んだ管理職であっても、一歩社外に出ればそのキャリアが通用しないことがあります。定年を前に自信を持って転職活動に挑んだものの、厳しい現実に直面し、途方に暮れるケースも。なぜ多くの人が再就職で躓いてしまうのか。ある男性のケースをみていきます。
「誰か俺を雇ってくれ!」と悲鳴……「年収1,200万円」59歳管理職、120社応募も全滅。エリートを襲う初めての挫折 (※写真はイメージです/PIXTA)

シニア転職市場の厳しい現実と「70歳就業時代」の備え

厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』によると、転職入職者の賃金変動状況において、年齢が高くなるほど「賃金が減少した」とする割合が増加します。特に50代後半から60代にかけての転職では、前職の賃金を維持・増加させることは困難であり、大幅な年収ダウンを受け入れざるを得ないケースが大半です。

 

有効求人倍率を見ても、年齢とともに数値は低下します。特に事務的職業や管理的職業の倍率は低く、一方で保安の職業(警備員など)やサービスの職業(介護など)は人手不足が続いています。シニアが「これまでのキャリア」に固執すればするほど、選択肢は狭まります。

 

65歳以上の就業率は上昇傾向にあり、2023年、65~69歳の就業率は52.0%、70~74歳は30.3%、75歳以上が11.4%。人生100年時代、70代でも働くことが珍しいことではなくなっています。一方で、企業がシニアに求めるものは限定的。そのようななかで、希望の仕事で希望の収入を得るのは、かなり困難だと考えておいたほうがいいでしょう。

 

また定年直前になって慌てるのではなく、40代・50代のうちから「社外でも通用するスキル」を磨き、自身の市場価値を客観的に把握しておくことが、将来の路頭に迷わないための唯一の防衛策だといえます。

 

気になる山本さんのその後ですが、再雇用への申し込みがギリギリ間に合いました。今は現役社員のサポートに尽力しているといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年版 労働経済の分析』

厚生労働省『一般職業紹介状況』

内閣府『令和6年高齢社会白書』