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妻を信じ続けた30年、定年目前で突きつけられた「残高100万円」の衝撃
「まさか、ここまで“無い”とは思っていませんでした。定年まであと3年ですよ。どうしようと考えていたのか……」
都内のメーカーに勤務する佐藤健二さん(57歳・仮名)。年収は1,200万円ほどあり、1,000万円の大台は優に超えています。世間から見れば「勝ち組」に分類される水準です。妻の由美さん(55歳・仮名)もパート勤務をしており、世帯年収は1,300万円以上になります。
健二さん夫婦は結婚当初から、家計管理を完全に妻の由美さんに任せていました。いわゆる小遣い制です。コロナ禍で出社が減ったタイミングで小遣いも月2万円に減らされ、今もこの金額で我慢しています。
「最近はランチを食べるにしても、余裕で1,000円を超えるので、正直、ツラいです。それでも小遣いについて、文句を言ったことはありません。50代になると、会社員人生の終わりを意識しないといけない。仕事を辞めたあとの生活を考えたら、贅沢は言っていられない――そう思っていました」
しかし、57歳になり、会社の早期退職優遇制度や再雇用後の給与シミュレーションの話が出始めたころ、健二さんはふと、現在の貯蓄額が気になりました。
「1,000万円、いや、2,000万円くらいは貯まっているだろうか」
そんな期待を胸に、佐藤さんは由美さんに通帳を見せてほしいと頼みました。由美さんは「いいわよ」と、さらりと通帳をもってきましたが、そこに記されていた残高は、わずか100万円。
「目を疑いました。桁が違うんじゃないかと。でも、何度見ても100万円なんです。『俺の30年間の労働はなんだったんだ』と、膝から崩れ落ちそうになりましたよ」
由美さんに問いただすと、彼女は悪びれる様子もなく、こう答えたといいます。
「だって、あなた。(子どもの私立)大学の学費もあったし、家のローンの繰り上げ返済もしたじゃない。食費だって上がってるのよ。私のパート代だって、自分の化粧品や洋服代とか買ったら何も残らないわ」
確かに2人の子どもはどちらも私立大学に通い、教育費はピークに達しています。住宅ローンも定年前には完済したいと、繰り上げ返済に励んでいました。それにしても、ゴールテープが見えているなかで100万円という貯蓄は、あまりに少なすぎると感じざるを得ません。
「色々と話を聞くと、妻はずいぶんと『どんぶり勘定』でした。今、どれくらい収入があって、どれくらいの支出があるのか、ほぼ把握していないに等しい。だからでしょうか、定年後のこと、老後のことについても大雑把。どれほどお金が必要か、まったくわかっていませんでした」
結婚して以来30年、家計管理はずっと由美さんに任せていたため、健二さん自身も細かく家計を把握しているわけではありません。しかし、それ以上に由美さんはわかっておらず、恐ろしいぐらいに「どんぶり勘定」だったのです。
「『まったく無駄遣いなんてしてないのよ!』と、妻は少々ご立腹で。しかし、きちんと管理していれば、もっとお金は溜まっていたんだろうな、月2万円の小遣いで我慢することもないんだろうな……どうしても後悔してしまう。さらにこのままでは、お金は貯まらないと確信しました。将来に向けて、私自身、もっと家計に、資産形成に関わらないとひどい目に遭うのは目に見えています」