久しぶりに帰省した実家で、母と親しげに談笑する見知らぬ男。一見すると礼儀正しく親切なその振る舞いの裏には、ある恐ろしい狙いが隠されていた……。離れて暮らす高齢の親と、その子。不安や心配が色々とあるでしょう。ある親子のケースを見ていきます。
あんたより、ずっと親切よ…53歳息子の忠告を一蹴する83歳母。実家を喰い物にする「黒スーツの男」、恐ろしい正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

「貴金属はないか」は要注意。データに見る訪問購入トラブルの予兆

今回の事例のように、最初は「何でも買い取る」とハードルを下げて訪問し、最終的には貴金属やブランド品を強引に買い叩く「訪問購入(押し買い)」のトラブルが後を絶ちません。

 

独立行政法人国民生活センターのデータによると、訪問購入に関する相談件数は年間数千件規模で推移しており、特に70歳以上の高齢者がターゲットにされる割合が高くなっています。彼らは「親切な話し相手」を演じることで、高齢者の警戒心を解く点に特徴があります。


 

▼「アポなし訪問」や「電話勧誘」は断る

突然の訪問で勧誘することは法律で禁止されています。「近くを回っているから」という口実は典型的な手口です。

▼名刺や会社情報を確認する

固定電話がない、住所が実態のないレンタルオフィスやアパートの一室である、古物商許可証を携帯していない業者は、トラブル時の連絡が取れなくなるリスクが高く、極めて危険です。

▼「貴金属」の話が出たら即座に帰らせる

「洋服」や「靴」を口実に上がり込み、会話の途中で「指輪はないか」「金歯はないか」と話題をすり替えるのが常套手段。この時点で会話を打ち切り、帰去を求める必要があります。

 

もし、すでに物品を渡してしまった場合でも、法律で定められた書面を受け取った日から8日以内であれば、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」が適用可能です。また、この期間中は物品の引き渡しを拒むことができる権利もあります。

 

しかし、最も難しいのは、今回の律子さんのように「相手を信頼してしまっている」ケースです。詐欺被害を防ぐには、物理的な対策だけでなく、日頃から家族間でコミュニケーションを取り、高齢者が孤立感から悪質業者に依存してしまう状況を作らないことが、最大の防御策といえるでしょう。

 

[参考資料]

独立行政法人国民生活センター『訪問購入(訪問買い取り)のトラブルを防ぐには』