文部科学省が「グローバル人材」の育成を掲げる昨今、我が子に早期から英語教育を受けさせたいと願う親は増え続けています。2023年に実施された「子どもの習い事と英語学習に関する調査(ゲシピ株式会社)」によると、親が「子どもの頃に習っておけばよかった」と思う習い事の第1位は「英語・英会話」。自身の後悔から、子どもには苦労させたくないと願う親心は切実です。
世帯年収1,150万円の30代夫婦…少し背伸びして長男を入れた「インターナショナルスクール」、初めての遠足で「保護者へのお願い」に驚愕したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

ママ友ランチ会で知った、残酷すぎる「答え合わせ」

話題は、先日の遠足のことになりました。

 

「先生がシェアしてくれた写真、みんな楽しそうでしたね」「そうそう、お菓子交換の時間も盛り上がったみたいで」

 

一人のママがタブレットを取り出し、スクール専用の共有アルバムを開きました。

 

「ほら、この写真。みんなすごくいい笑顔」

 

画面を覗き込んだモモさんは、次の瞬間、息を呑みました。そこには、無邪気にお菓子を頬張る子どもたちの姿が写っていましたが、その手にあるもの、そしてレジャーシートに広げられたパッケージが、明らかに「異質」だったのです。

 

ある子が手に持っているのはマカロン。箱のロゴは「ピエール・エルメ・パリ」。別の子が掲げているのは、「千疋屋」のフルーツマドレーヌ。さらにモモさんを戦慄させたのは、写真の端に写り込んでいた光景でした。先生たちの周りに、桐箱に入った高級焼き菓子や、リボンのかかったデパートの紙袋がいくつも置かれていたのです。

 

(えっ……先生たちの分まで用意するのが常識だったの……?)

 

もちろん、そんなルールはどこにも書いてありません。しかし、写真の中の“暗黙の了解”は雄弁でした。たかが幼児の遠足のおやつに、数万円クラスの品物が飛び交っているのです。

 

自分の「頑張って高級スーパー」という感覚が、このコミュニティでは「底辺」ですらないかもしれない。その事実に、モモさんは顔から火が出るような恥ずかしさを覚えました。

 

そのとき、モモさんは悟りました。インターナショナルスクールに通わせるということは、単に「高い授業料を払う」だけではないのだと。「小学校もインターへ」などという淡い夢は、この瞬間、脆くも崩れ去ったのです。

「隠れ教育費」の重圧

その日以来、モモさんの目には、いままでみえていなかった「出費」が次々飛び込んでくるようになりました。ホテルでのバースデーパーティー、プレゼントの相場の違い、夏休みになればハワイやスイスのサマースクール……。

 

「うちは、共働きでカツカツのなか、なんとか学費を捻出して通わせているけれど……周りは『学費なんて誤差』というレベルの富裕層ばかりなんだ」

 

夫と家計簿を見直しました。いまの生活でも、貯蓄はできています。しかし、もしこのままインターの小学校に進学させたら、学費はさらに上がり、年間250万〜300万円。それに加えて、あのお付き合いの費用やサマースクール代がかかってきます。

 

「無理だね」夫が静かにつぶやきました。「学費だけなら払えるかもしれない。でも、この環境で息子に惨めな思いをさせずに付き合っていくのは、僕らの年収じゃ限界がある」