子育てがひと段落すると、家族や自分自身の変化に気づく瞬間があります。長年築いてきた日常が少しずつ形を変えていくなか、見過ごしてきた心や体の揺らぎが、ある日思いがけない形で表れることも。そんな誰にでも訪れうる身近な「変化」についてみていきます。
だって、寂しかったから…〈年収850万円〉九州に単身赴任の52歳夫。3ヵ月ぶりの帰宅で目撃した、50歳妻「夫の知らない別の顔」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

更年期における夫婦間のストレスとその対処法

更年期は、卵巣機能の低下に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少する時期であり、一般的に45歳から55歳ごろに当たります。このホルモンバランスの乱れは、心身に多様な不調(更年期症状)を引き起こします。美佐子さんのように、気分の落ち込みやイライラといった精神症状が現れると、その結果として衝動的な行動、たとえば買い物への依存が生じることもあります。

 

内閣府『男女共同参画白書 令和4年版』によれば、女性のライフイベントにおけるストレス要因として「子どもの進学・独立」が挙げられており、この時期は更年期と重なることが多く、ストレスが複合的に作用しやすいことがうかがえます。美佐子さんの場合、夫が単身赴任で物理的に不在で、相談相手がおらず、孤独感やストレスを内に溜め込みやすくなった結果、一時的な快感や充足感をもたらす買い物に逃避してしまった――そのような顛末でしょうか。

 

このような状況を乗り越えるためには、夫婦間でのコミュニケーションの質と量の確保が不可欠です。離れて暮らしていても、ただの状況報告だけでなく、お互いの心身の状態や悩みを共有する時間を持つことが重要です。また、夫側も更年期障害についての正しい知識を持ち、「イライラしているのは自分のせいではないか」「贅沢をしている」と安易に決めつけるのではなく、「ホルモンバランスの乱れによる心身の不調である」と理解を示す姿勢が求められます。

 

「妻に『よかったら、九州に来ないか』と誘いました。慣れない土地での暮らしですから、あっちの暮らしがつらくなったら、また東京に戻ってきたらいいと。気分転換にもなり、良いのではないかと思って」

 

現在、九州では夫婦ふたりで住むことのできるマンションへ引っ越し。たまに夫婦で東京の自宅に戻る生活を続けているといいます。

 

[参考資料]

厚生労働省『更年期障害 | e-ヘルスネット』

内閣府『男女共同参画白書 令和4年版』