(※写真はイメージです/PIXTA)
真面目な家庭を崩壊させる「ギャンブル依存症」の深刻な実態
今回の事例のように、真面目な家庭を崩壊させるギャンブルによる借金問題は、決して珍しい話ではありません。
日本弁護士連合会が2023年に公表した『破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、破産の申し立てをした人の負債額は、平均1,084万2,551円。また破産に至った主な理由(多重債務者)をみていくと、「生活苦・低所得」が最も多く(65.86%)。「病気・医療費」(26.44%)、「失業・転職」(17.36%)、「給料の減少」(11.44%)と続きます。「ギャンブル」は(9.89%)と、決して少なくないことがわかります。
そもそもギャンブル依存症は、単なる「気の緩み」や「趣味」で片づけられる問題ではありません。世界保健機関(WHO)も認める精神疾患のひとつであり、医学的には「ゲーム障害(ギャンブル関連)」として分類され、自分の意思だけでは止められない、脳の機能に影響を及ぼす深刻な病気とされています。
負けても取り戻そうと、より多額のお金をつぎ込み、頻度が増していき、治療なしでは回復が難しいもの。また、再発しやすい特徴があります。お金の問題だけでなく、嘘や隠し事による家庭内の不信感を生み、家族全体を巻き込んで心身を疲弊させるケースも珍しくありません。
今回の事例で、夫婦が息子の借金を肩代わりしましたが、それだけでは依存症治療において逆効果になることがあります。「イネイブリング(助長行為)」と呼び、本人が痛み(借金や生活の破綻など)を経験しないと、「また誰かが助けてくれる」と依存行動が強化されてしまうことがあるのです。
ギャンブル依存症に対し、家族が取るべきは、まず事実を認め、専門機関へ相談すること。本人を責めるのではなく、「病気」として捉え、精神保健福祉センターや専門病院、自助グループにすぐに相談することが先決です。さらに財布、通帳、キャッシュカードをすべて本人から隔離し、家族が厳重に管理します。また依存症に巻き込まれた家族のための自助グループ等で、対応方法を学び、家族自身の孤立を防ぐことも肝心です。
「ショックでした。長男がギャンブル依存症になったことはもちろん、息子も妻も、私に相談してくれなかったことが……。仕事ばっかりだったから、頼れなかったのでしょう。本当、情けないです」
この一件があり、健一さんは定年退職を辞め、再雇用で働き続けることを決意。長男・翔太さんは1年半の治療の末、仕事復帰を果たしたといいます。
[参考資料]
日本弁護士連合会『2023年破産事件及び個人再生事件記録調査』
消費者庁『ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ』