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定年目前、夫が震えた「消えた老後資金」の行方
都内中堅企業に勤める佐藤健一さん(62歳・仮名)。新卒で入社した会社で40年。60歳の定年で仕事を辞めるつもりだったといいますが、再雇用で引き続き、同じ会社で働き続けています。
「自分でいうのもおかしいですが、真面目だけが取り柄で。それだけで頑張ってきました。現役のころは、ローンだ、教育費だと大変だったから、『小遣いはいいよ』なんて言って。もらっていたのは、1日500円のランチ代だけ。だから……月1万5,000円。飲み会のときは都度お願いするものの、ほとんど行かないため、月1万5,000円で済んでしまうことはザラでした」
ただ真面目に頑張ってきたからこそ、60歳定年で区切りをつけたい――そう思っていたという健一さん。金銭管理はすべて妻・真由美さん(60歳・仮名)がしていました。真由美さんも健一さんに負けず劣らず真面目で、毎月、コツコツと貯蓄していくタイプ。健一さん自身、小遣い以外のお金の流れを把握していませんでしたが、「老後は1,800万円ほどになるであろう退職金と合わせて、ゆとりある生活ができるだろう」という、確信に似たものがあったといいます。そこで定年を迎える前に「会社を辞めても大丈夫だよな」と、真由美さんに確認をとったそう。しかし、返ってきた言葉は、思いもしないものだったといいます。
「ごめんなさい、もう少し、働いて……」
一瞬、何を言っているか理解できなかったという健一さん。そして真由美さんが差し出した貯蓄用の預金通帳をみて、思わず二度見したといいます。
「わずか200万円ほどしかありませんでした。1,000万円くらいは貯まっているだろう、退職金と合わせたら老後は大丈夫だろう……そんな感覚はあったので、何かの間違いだろうと」
しかし、通帳の履歴をよく見ると、半年前に一気に800万円ほど引き出している形跡を発見。この引き出しは一体何なのだ――観念したように話し出したのは、公務員として働く長男・翔太さん(32歳・仮名)についてでした。実はギャンブル、主に競馬や競艇で借金をつくり、首が回らなくなり泣きついてきたのだとか。
毎日のように市民からご意見という名のクレームを受ける毎日。ストレス発散とばかりに、学生時代以来のギャンブルにすっかりのめり込んでしまったといいます。さらに仕事も手がつかなくなり休職、借金は夫婦の貯蓄で清算しました。そして翔太さんは今、ギャンブル依存症の治療のため、グループホームに入所しているといいます。
「遠い世界の話をされているかのような感覚でした。『あのしっかり者の翔太が……』と、それ以外は考えられませんでした」