年収は変わらないのに、教育費の重圧に苦しむ家庭と、余裕を持って資産形成まで叶える家庭。その明暗を分けるのは、子供たちの「受験戦略」の違いにありました。親世代の常識とは異なる、効率重視のZ世代ならではの学習スタイルとは。家計をも左右する、現代の大学受験のリアルな実情と新たな潮流を解説します。
年収900万円・48歳管理職の絶望。息子の予備校に「年120万円」払う親と、「年1万円も払わず」息子難関大合格の親との決定的違い (※写真はイメージです/PIXTA)

「課金」すれば安心という親の勘違い…効率を重視するZ世代

株式会社エンライク/じゅけラボ予備校が2025年夏に行った調査によると、大学受験で塾や予備校を利用しなかった理由のトップは「費用が高い(31.5%)」でしたが、注目すべきはそれに続く理由です。

 

「本人が望まなかった(23.7%)」「自分のペースで勉強したかった(19.9%)」という、本人の意思や学習スタイルに起因する回答を合わせると4割を超え、費用の問題を大きく上回る結果となりました。

 

調査元の分析では、デジタルネイティブであるZ世代特有の価値観が影響しているといいます。彼らはネット上の情報を取捨選択し、自分に合った学習計画を立てることに長けています。

 

移動時間や固定カリキュラムを「非効率」と捉え、安価で質の高いスマホアプリや動画教材、学校の手厚いサポートを駆使して合理的に学習を進めるスタイルが確立されつつあるのです。「お金がないから」ではなく「あえて行かない」という選択は、家計防衛と学習効率の両立を目指す現代の新たなスタンダードといえるでしょう。

 

大学受験において「塾や予備校に通わせないと不安」と考える保護者は依然として多いものです。親世代の受験戦争の記憶といえば、「良い予備校に入り、有名な講師の授業を受けることが合格への近道」というものでした。そのため、子どものためを思えばこそ、無理をしてでも高額な費用を捻出しようとします。

 

しかし、田中さんの長男のように、既存のシステムに頼らず、自分に合った学習スタイルを確立する受験生が増えているのもまた事実なのです。

 

[参考資料]

文部科学省『令和3年度子供の学習費調査』

株式会社エンライク/じゅけラボ予備校『【調査報告】大学受験で塾を利用しない理由、最多は「費用」も約4割が「本人の意思」。Z世代の"主体性"が浮き彫りに。』