年収は変わらないのに、教育費の重圧に苦しむ家庭と、余裕を持って資産形成まで叶える家庭。その明暗を分けるのは、子供たちの「受験戦略」の違いにありました。親世代の常識とは異なる、効率重視のZ世代ならではの学習スタイルとは。家計をも左右する、現代の大学受験のリアルな実情と新たな潮流を解説します。
年収900万円・48歳管理職の絶望。息子の予備校に「年120万円」払う親と、「年1万円も払わず」息子難関大合格の親との決定的違い (※写真はイメージです/PIXTA)

教育費に苦しむ親と、教育費に余裕の親の決定的違い

「正直、何のために働いているのかわからなくなる時がありますよ。給料が入っても、右から左へ教育費として消えていくんですから」

 

都内のメーカーで管理職を務める佐藤健一さん(48歳・仮名)は、深いため息をつきながら家計の現状を語ります。佐藤さんの年収は約900万円。世間的には「勝ち組」といわれるサラリーマンかもしれませんが、その生活ぶりは決して余裕のあるものではないといいます。

 

最大の要因は、高校2年生になる長男の教育費です。私立一貫校に通わせながら、大学受験を見据えて大手予備校にも通学。年間の学費に加え、予備校の授業料が重くのしかかります。

 

「予備校代だけで年間120万円近くかかります。夏期講習や冬期講習が入ると、さらに数十万円単位で飛んでいく。息子が『この講座も取りたい』と言えば、親として『ダメだ』とは言えません。今は老後資金なんて貯める余裕はまったくない、ボーナスも教育費の補填に消えていきますよ」

 

文部科学省『令和3年度子供の学習費調査』によると、高校生(全日制)の学習塾費の平均額は、公立で約20万円、私立で約25万円となっています。しかし、これはあくまで平均値です。佐藤さんのように難関大学を目指すコースを選択すれば、その負担額は平均の数倍に膨れ上がるのが現実です。

 

一方、佐藤さんと同程度の年収でありながら、涼しい顔をして話してくれたのが、都内のIT企業勤務の田中雄二さん(48歳・仮名)です。田中さんの長男は今年、現役で難関私立大学に合格しましたが、驚くことに「塾なし」での受験を貫いたといいます。

 

「息子が進学した私立高校は進学に熱心で、補習や進路指導が手厚かったんです。息子自身も『予備校に行くと移動時間が無駄になる』と言って、学校の自習室や図書館を活用していました。わからないところはYouTubeの解説動画を見たりしていたようで」

 

田中家の教育費負担は学費を除き、トータル数千円程度の参考書のみ。浮いたお金はNISAなどの投資に回しており、老後資金の形成も順調に進んでいるとか。

 

「親としては大学進学のために通塾は覚悟していたのですが、ちょっと肩透かしを食らった感じですね。まあ大学では結構な学費を払っていますが……」