「日当たりのよい南向き」「閑静な住宅街」、住まい選びで人気の条件ですが、いざ住んでみると想定外の事態に悩まされることがあります。よかれと思って選んだ条件が、かえって暮らしにくさを招いてしまう。――そんな戸建てならではの“誤算”について解説します。
手取り50万円で「閑静な住宅街に南向きの家」を建てた30代夫婦…実は「365日カーテンを開けられない」「騒音にビビる」、住んでみなければわからなかったこと (※写真はイメージです/PIXTA)

「持ち家 vs. 賃貸」損得勘定ではみえない“生活の質”

「注文住宅」を建てた層によくみられる特有の落とし穴があります。

 

1.「開放感」と「プライバシー」はトレードオフ

住宅展示場のモデルハウスやSNSの写真は、隣家や道路事情を考慮していません。実際の住宅地で「カーテンを開け放って暮らす」には、塀や植栽にかける外構費用が数百万円単位で追加で必要になります。

 

2.「管理」はすべて所有者の責任

賃貸なら管理費を払ってアウトソーシングできる「掃除・修繕・近所付き合い」が、戸建てではすべて自分に降りかかります。この「みえない労働時間」をコストとして計算できていない人が多くいます。

 

3.注文住宅は資産になりづらい

こだわりの注文住宅は、建てた本人の好みにはどんぴしゃですが、市場にとっては「クセのある中古物件」になりがちです。特に地方では土地値が上がらないため、建物の減価償却がそのまま資産価値の減少に直結します。

「憧れ」の解像度を上げる

カツキさん夫婦の誤算は、「家を買うこと」をゴールにしてしまい、「その家で具体的にどう過ごすか(朝起きてから寝るまで、平日と休日)」のシミュレーションが欠けていたことにあります。

 

営業マンの「家賃はドブ」という言葉は、一面の真実ではありますが、すべてではありません。賃貸には「気楽さ」や「自由」といった、お金に換えられない価値があります。一方、持ち家には「責任」と「労働」が伴います。

 

「こんなはずじゃなかった」と後悔する前に、憧れの暮らしが、自分たちの性格やライフスタイルに本当に合っているのか、冷静に見極める必要があります。