「日当たりのよい南向き」「閑静な住宅街」、住まい選びで人気の条件ですが、いざ住んでみると想定外の事態に悩まされることがあります。よかれと思って選んだ条件が、かえって暮らしにくさを招いてしまう。――そんな戸建てならではの“誤算”について解説します。
手取り50万円で「閑静な住宅街に南向きの家」を建てた30代夫婦…実は「365日カーテンを開けられない」「騒音にビビる」、住んでみなければわからなかったこと (※写真はイメージです/PIXTA)

スタイリッシュなマイホーム

地方都市で暮らすカツキさん(仮名/36歳)とシオリさん(仮名/35歳)。2人は3年前、長男の育児に少し慣れたタイミングで、引っ越しをしました。カツキさんは年収560万円、シオリさんは290万円。世帯年収850万円、月の手取り合算は約50万円。地方の共働き夫婦としては、決して悪くない水準です。

 

2人が建てたのは、土地・建物あわせて5,000万円の「建築家とつくる注文住宅」。 貯蓄500万円を頭金として入れ、夢のマイホームを実現したのです。南向きの大きな掃き出し窓、リビングとつながる広々としたウッドデッキ、そして憧れの吹き抜け。「子どもをのびのび育てたい」という夢を詰め込んだ、自慢の我が家でした。

 

しかし現在、カツキさんは「休日は家から出たくない」と零し、シオリさんは「リビングのカーテンを開けたことがない」と嘆きます。

「家賃はドブに捨てるようなもの」と説く営業マンの猛攻

5年前、2人は賃貸アパートに住んでいました。「そろそろ広い家に」と住宅展示場を訪れた際、営業マンの言葉が刺さりました。



「家賃をいくら払っても家は自分のものにはなりませんし、高齢になったら貸してくれる大家も減ります。保証人を探すのも大変ですよ」

 

「確かに。老後の住まいを考えたら、早めに買って資産にしたほうがいいのかな」とカツキさんは納得しました。

 

さらに営業マンは続けます。

 

「賃貸は断熱性や防音性が低く、光熱費などのコスパも悪いんです。それに、お子さんが幼稚園に上がる前に学区を決めておけば、お友達と一緒に小学校へ上がれて安心ですよ」

 

子育ての環境といわれると、親としては心が動きます。そして、どうせ買うならと、建売ではなくこだわりの注文住宅を選択。道路に面した南側の土地を選び、スタイリッシュな外観にしました。

 

「これで最高の育児ができる」そう信じて疑わなかったのです。