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「調整と謝罪」の日々。部下と上司の板挟みで疲弊する45歳課長の告白
田中健一さん(45歳・仮名)、中堅IT企業で12名の部下を束ねる課長職、いわゆる中間管理職です。 その表情には、慢性的な疲労の色が濃く浮かんでいます。
「役員からの無茶振りなんて日常茶飯事。現場の状況をまったく理解していない。これをどうやって部下に伝えたらいいのか、毎回、途方に暮れています。中間管理職なんて、聞こえはいいですが実態は『調整役』ですよ。上からは業績と変革を求められ、下からは不満や不安を突き上げられる。まさに板挟みです」
田中さんの疲弊の根源は、まず純粋な業務過多にあります。 いわゆる「働き方改革」以降、部下の残業時間には厳しい制限が設けられました。
「もちろん、部下の健康を守るのは当然です。しかし、会社は業務量そのものを見直してくれない。結果、どうなるか。部下が時間内に終えられなかった業務や、クライアントからの急な修正依頼は、すべてマネジメント担当の私に回ってきます。いわゆる『プレイングマネージャー』ですが、実態は『調整と火消し』ばかりです」
田中さん自身、毎月の残業時間は80時間を超えるのが常態化しているとか。
また「疲弊の理由は、純粋な業務量だけではありません」と田中さんは続けます。「重い責任と、それに見合わない評価。これが一番こたえます」
先日、部下の一人がメンタル不調で休職しました。
「もちろん、直接的な原因は彼自身の問題もあったかもしれません。しかし、上層部からは『なぜ事前に察知できなかったんだ』『お前の管理能力不足だ』と厳しく叱責されました。一方で、プロジェクトが成功しても、評価されるのは役員や部長です。『田中君のチーム、よくやった』とは言われますが、昇給やボーナスへの反映は微々たるもの。むしろ、『もっと高い目標を達成しろ』と、次の四半期のさらに高いノルマが課せられるだけ。達成感なんて、感じる余裕もありません」
上司の顔色をうかがい、部下に頭を下げ、調整と謝罪に走り回る毎日。「こんなことをするために課長になったんじゃない」と、仕事そのものの意義さえ見失いそうになるといいます。
さらに、田中さんが最も深刻な問題として挙げたのは、「成長の停滞感」でした。
「毎日、目の前の火消しに追われて、新しいスキルを学ぶ時間がまったくありません。業界の技術は日進月歩で、新しい技術が次々に出てくる。部下たちには研修を受けさせようと調整していますが、私はその調整ばかり。自分だけが時代に取り残されていくような強い焦りがあります。このまま今の会社にいても、自分の市場価値は下がる一方ではないか――そのようなことばかり考えています」