病気や失業など、万が一の退職を支えるセーフティネット。しかし、調査によれば「失業手当」や「傷病手当金」を正しく理解し活用できている人は半数程度にとどまるのが実情です。最も支援が必要な時に、「知っているつもり」が原因で受給できないという「落とし穴」もあります。いざという時に後悔しないため、今知っておくべき2つの制度の基本と注意点をみていきます。
「知ってるつもり」で大損も…退職者の半数が活用できない「失業・傷病手当金」の落とし穴 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職時に知っておきたい2つの支援制度

サポートメイト株式会社が実施した『退職に伴う制度の認知度や利用実態に関する調査』によると、「失業保険」について、「知っている」と回答した人は49.3%、「名前だけ知っている」は50.5%。また「傷病手当金」について、「知っている」は48.7%、「名前だけ知っている」は46.7%で、どちらも9割以上は知っているものの、具体的な給付条件まで「内容を理解している」人は約半数にとどまりました。

 

さらに、退職経験がある人のうち、制度を実際に「利用した」のは44.2%にとどまり、一方で、給付条件を満たしていたにもかかわらず「制度を知らず利用できなかった」と回答した人は21.2%に達し、退職者の半数以上が、知識不足などによって制度を十分に活用できていない実態が浮き彫りになりました。

 

特に、メンタル不調が原因で退職した人の約45%が「片方の制度しか知らなかった」または「どちらも知らなかった」と回答しており、最も情報が必要な層へ届いていない実態がうかがえます。

 

そこで特に重要な「失業保険(基本手当)」と「傷病手当金」の基本的な概要を確認しておきましょう。

 

1.失業保険(基本手当)

雇用保険の被保険者が失業した際、生活の不安を軽減し、再就職を支援するために支給される手当です。

 

■目的:失業中の生活安定と再就職活動の支援。

■主な受給要件:失業の状態であること… 「就職しようとする積極的な意思」と「いつでも就職できる能力(健康状態など)」があるにもかかわらず、職業に就けない状態であること。※病気やケガ、妊娠・出産、育児、休養目的などで「すぐに就職できない」場合は対象外となります。

■被保険者期間:原則として、離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間(賃金支払いの基礎日数が11日以上ある月)が通算12ヵ月以上あること。※倒産・解雇や、田中さんのような正当な理由のある自己都合退職者(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合は、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6ヵ月以上あれば認められる場合があります。

 

2.傷病手当金

健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガのために仕事を休み、給与が支払われない時に生活を保障するために支給される制度です。

 

■目的:病気やケガによる休業中の生活保障。

■主な受給要件(すべて満たす必要あり):

・業務外の病気やケガでの療養…業務上や通勤中のケガ(労災保険の対象)は除きます。自宅療養も対象です。

・仕事に就くことができない…医師などの意見に基づき判断されます。

・連続4日以上の休業…連続する3日間の休み(待期期間)の後、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。待期には有給休暇や土日・祝日も含まれます。

・給与の支払いがない…休業中に給与が支払われていないこと。ただし、支払われても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。

 

調査では、全体の9割近くが「知っていれば利用したい」と回答しています。「知っているつもり」では、いざという時に適切な支援を受けられない可能性が高く、平時から正しい情報を得ておくことが重要です。

 

[参考資料]

サポートメイト株式会社『退職後の「給付金」、9割が「利用したい」と回答するも…実際に利用できたのはわずか3割』