高齢者の住まいとして存在感が増している「老人ホーム」ですが、入居の際に気になるのがやはり費用。綿密なシミュレーションをしたり、体験談を聞いたりして、「こんなものか」と見当を付けますが、それでも想定以上の請求額に仰天することも珍しくありません。
月額費用のほか、月2万円くらいかな…55歳男性、友人から「親の老人ホーム費用」の目安を聞いて余裕に構えていたが、「たっ、高!」と思わず絶句する「初めての請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

物価高が直撃する「老人ホーム費用」

昨今の物価高で、老人ホームの「月額利用料」以外の費用、特に「その他実費」の見積もりの甘さから、入居後の請求額に驚くケースは少なくありません。

 

老人ホームの費用は、大別すると以下の3つで構成されています。

 

〇月額利用料(家賃相当額、管理費、食費など)

〇介護保険サービス自己負担分(介護度に応じた1割~3割負担)

〇その他実費(上乗せ介護費、おむつ代、日用品費、理美容代、レクリエーション費、医療費など)

 

問題は、3つ目の「その他実費」。これは個人の生活スタイルや必要なケアによって変動するため、パンフレットでは「実費」としか記載されていないことがほとんどです。

 

そして昨今の老人ホーム費用に直撃しているのが、昨今の物価高です。内閣府 規制改革推進室が介護施設・事業所を対象に実施した『物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査』によると、9割以上の施設が物価・光熱水費等の高騰による「影響があった」と回答しています。特に「消耗品(介護用品・衛生用品)」については5%~98%、「食材費」については5%~67%のコスト増加が報告されています。

 

施設側も企業努力だけでコスト増を吸収するのは難しく、別の調査では、2022年の時点で有料老人ホームやサ高住の23%が「管理費や食費の値上げを実施した」と回答しています。

 

佐藤さんの友人が口にした「月2万円くらい」という目安は、物価が安定していた数年前の「常識」だったのかもしれません。老人ホームへの入居を検討する際は、月額利用料という表面的な金額だけでなく、変動する「その他実費」の内訳を詳しく確認し、昨今の物価高を考慮した余裕のある資金計画を立てることが不可欠です。

 

[参考資料]

内閣府 規制改革推進室『物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査』

株式会社TRデータテクノロジー『介護施設・事業所における物価高騰の影響に関する調査』