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「負動産」はいらない…実家相続を拒否する息子の本音
「まさか、息子に『いらない』と真顔で拒否されるとは、父も思っていなかったようです」
東京都内で妻子と暮らす山田健一さん(50歳・仮名)。 現在、地方都市に住む父・昭夫さん(78歳・仮名)との間で、実家の相続をめぐって深刻な溝が生まれているといいます。
昭夫さんは、年金(月額約20万円)で暮らしながら、先祖代々の家を守ってきました。 その家は、健一さんが幼少期を過ごした場所ですが、数十年前に昭夫さんが退職金をつぎ込み、大幅に増改築したもの。
「先日、帰省した際、父がおもむろに言ったんです。『俺ももう80近くだ。この家は、長男のお前に遺したい』と」
健一さんは「ごめん、いらない」と即答したといいます。 健一さんの反応を予想していなかったのか、昭夫さんは絶句していたとか。
健一さんには、相続を全力で拒否する明確な理由があるといいます。
「まず、遠すぎます。私の生活拠点は東京で、実家までは新幹線と在来線を乗り継いで片道4時間。妻も私も仕事を続けていますし、将来的にあちらに住むという選択肢はゼロです」
問題は距離だけではありません。 実家は昭夫さんの代で建て増しした結果、健一さんの記憶にある「実家」とは似ても似つかぬ「広大な屋敷」と化していました。
「部屋数は8室以上あり、無駄に広い庭もある。父は1人で住んでいますが、明らかに管理が行き届いていません。それでも『立派な家だ』と誇りに思っているんです。住まない家にかかる固定資産税、荒れ放題の庭の手入れ、いずれ必要になる大規模修繕…。考えるだけで頭が痛い。はっきり言って『負動産』でしかありません」
さらに万一の際の相続人は健一さんだけではありません。 下に妹と弟が1人ずつ。 もし実家を継ぐことになったら、「長男だからってズルい」などと、相続争いも起きかねません。 せっかく仲のいいきょうだい。相続なんかでその仲を壊したくないのです。
「もし本当に遺される私たちのことを思ってくれるなら、あの家は売って、現金にしてから残してほしいです」