毎朝のように満員電車に乗って通勤する都会勤務のサラリーマン。定年後には地方に移住して、のんびりと暮らしたい……そう思っている人も少なくないでしょう。しかし、安易なイメージだけで移住を決めると、思わぬ「誤算」に直面することが少なくありません。ある夫婦のケースをみていきます。
〈退職金2,200万円〉60歳定年男性、妻とともに念願の地方移住も…半年後、遊びに来た友人も驚いた「田舎暮らしの実情」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「住居費」以外は割高も。移住前に確認すべき「生活コスト」

多くの人が抱く「田舎暮らし=生活費が安い」というイメージ。その思いで移住し、現実とのギャップに直面するケースは少なくありません。実際に、生活コストは地域によって大きく異なります。

 

総務省統計局『家計調査(家計収支編)二人以上の世帯』(2024年平均)を見ると、都市規模別に消費支出の内訳を確認できます。

 

これによると、「住居」費はやはり「大都市」(人口100万人以上)が最も高く、人口15万人未満の「小都市A・町村」が最も低くなっており、これは鈴木さんの実感とも一致します。

 

しかし、他の項目に目を向けると、違った実態が見えてきます。

 

たとえば「交通・通信」費に含まれる「自動車等関係費」は、大都市よりも「小都市A・町村」のほうがが多い傾向にあります。これは、鈴木さんの事例のように、地方生活では車が生活必需品であり、所有台数や利用頻度が増えるためと考えられます。

 

また、「光熱・水道」費についても、地域差が大きくなります。特にプロパンガス料金や、寒冷地における暖房費(灯油代など)は、都市ガスが普及し、住宅の気密性が高い都市部よりも高額になることが珍しくありません。

 

地方移住は、住居費の安さや自然環境など、多くの魅力があります。しかし、その魅力だけに目を向けてしまうと、「こんなはずじゃなかった」という後悔につながりかねません。

 

移住を成功させるためには、安易なイメージに頼るのではなく、その土地でのリアルな生活を具体的にシミュレーションすることが不可欠です。車の必要性や台数、ガソリン代、利用するエネルギー(都市ガスかプロパンガスか)、スーパーの場所や物価など、日々の暮らしに関わるコストを事前に詳細に調べ、現実的な資金計画を立てることが、定年後の豊かな移住生活の鍵となります。

 

「生活費を抑えるために移住をしたわけではないので、後悔はありません。都会では味わえなかった魅力がまだまだあるので、存分に楽しもうと思っています」

 

[参考資料]

総務省統計局『家計調査(家計収支編)二人以上の世帯』